ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

綾部福祉会 あやべ作業所

活発な商品開発で地元定着
規模拡張、グループホームも(2021/05/31)


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分割した自家製パンに、しょうゆバターをまんべんなく塗り「しょうゆラスク」に(提供写真)

 綾部市の市街地中心から西北に車で15分ほど田園地帯を走ると、したたる緑の山中に約6000平方bの広々とした敷地に赤い屋根、大きな窓の開放的な建物が数棟並ぶ。社会福祉法人綾部福祉会(大槻弘和理事長)が運営する「あやべ作業所」は、活動を始めて40年余り、順次施設を拡張して、多様な事業や取り組みを続ける活発な団体だ。

 なかでもユニークなのは、同市物部町の作業棟で行っているしょうゆの製品化や、敷地内の畑で栽培したそばを使った「あやぼうろ」作りなど。障害のある利用者70人ほどが、縫製や資源回収などを含め、職員と一緒に作業に当たり、リハビリや食事提供などの生活介助も受けている。

 しょうゆ作業は、20年前に別の場所でスタート。10年前に新築移転した作業棟には高さ約2・2b、直径約1・5b、容量4000gの大きなタンクが据えられている。滋賀県の醸造組合から搬入した本醸造しょうゆを入れ、大きな木製のかいでかくはんしながら加熱殺菌し、消毒した一升びんやペットボトルに詰める。「京都綾部の本醸造醤油(しょうゆ)」のラベルを貼って、配達や配送販売まで、約10人で担っている。

 同市にはかつて全国的な製糸会社の名にちなむ「郡是(ぐんぜ)醤油」があり、住民に親しまれた。施設長の大槻昌喜さん(59)は「そんな親しまれる愛称を募ってるんですが、なかなかなくて」としょうゆ香が漂う巨大タンク前で苦笑する。

 関連商品が「しょうゆラスク」。車いす利用の重度障害のある利用者らが、オーブンで焼いた自家製パンを細かく分割、1個ずつバターナイフでしょうゆバターをまんべんなく塗る。支援員の太田浩子さん(57)は「手間がかかる作業ですが、しょうゆの風味と香り、甘じょっぱい味が人気」という。

 丁寧に包装し、自家製クッキーや「あやぼうろ」などと同様、同市周辺にある「道の駅」や、市街地で地元物産を扱う「あやべ特産館」などで販売している。5年前からは同市青野町の繁華な場所に、バウムクーヘンやクッキーなど焼き菓子を作るワークショップ「サクラティエ」を開設。しゃれた構えの絵本カフェも併設して、20人余りが職員とともに、お菓子作りやカフェ運営で働いている。

 こうした作業ができるノウハウは、20年以上前にスタートし、その後運営法人を統合した作業所「ともの家」で弁当作りや製菓作業、公共施設の清掃作業などを重ねてきたたまものという。同家は今年4月に新築移転、ピザ製造にも取り組んでいる。

 同福祉会はまた、共同生活援助事業のグループホームも20年余りで3施設に増やし、現在は総計20人が協力しながら生活している。

 地域に密着した事業や活動の積み重ねで住民や関係者らとの交流も深まり、毎年8月に開く「作業所まつり」は千人ほども集まる。

 大槻施設長は「施設も大きくなり大きな機器も設置でき、医療的ケアなどが必要な重度の利用者も受け入れられるようになっている。就労作業や商品開発でも特徴を出すよう工夫して、地元定着をさらに深めていきたい」と意欲的だ。

綾部福祉会
綾部共同作業所(あやべ作業所の前身)の母体として1980年に発足。
93年に社会福祉法人認可を受け、94年に「あやべ作業所」開設。綾部市物部町に新築移転。98年にグループホームを開設。
現在、同市内に就労継続支援事業所3施設、グループホーム3施設などを運営している。