ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
若葉 福祉現場に芽吹いた担い手たち

障害、高齢、児童などの福祉施設で働く若手職員や、大学生など若手が中心となり活動する団体などのリーダーを取り上げる新企画「若葉」を始めます。福祉現場の魅力を伝え、働く人たちを応援します。

子どもの笑顔に接したい


児童養護施設舞鶴学園の児童指導員
折笠 楓愛おりかさ ふうあさん(23)



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子どもと遊ぶグラウンドで桑原位修施設長(左)と話す折笠楓愛さん。後ろに「小舎制」の学園建物が見える=舞鶴市泉源寺
 舞鶴市東部ののどかな田園の中にある児童養護施設舞鶴学園は、桜の木や草花が彩る中庭を囲んで2階建て木造家屋数棟が建つ。個室と共同スペースを持つ独立的な建物で子どもたちがそれぞれ少人数で暮らす「小舎制」で、現在は職員約30人と高校生から小学生までの約30人が生活する。

 4年前の春から勤める児童指導員折笠楓愛さん(23)は、今は小舎のひとつ「星の家」で小学2年生から高校2年生までの7人と寝起きを共にしている。

 施設長の桑原位修(くわはら たかのぶ)さん(48)は、児童養護施設の役割を「保護者がいないなど何らかの理由で不適切な養育状態にあり、家庭を離れて生活せざるをえない子どもたちを受け入れて、退所後も自立のための相談などの援助もする」と説明。小舎制の同学園は、子ども会活動やクリスマス会、「ガーデンコンテスト」「食のコンテスト」など子ども中心の主体的活動も盛んだ。

 「人の助けになる仕事を」と龍谷短大の社会福祉学科で学んだ折笠さん。マレーシアの森の中の児童養護施設に短期留学してパイナップル畑での作業も体験。舞鶴学園にインターンで来て「自然の中で、子ども中心の行事が多い施設だというのが気に入り」就職した。

 福祉に関わって働きたいと思う人には「児童養護施設に限らず、知らないことも多いと思うけれど、興味があるなら、まずはいろんな体験をしてみるといい。私自身もそう」とアドバイスする。

 桑原さんは「人は信頼関係がなければ、自立した生活もできないのではないか。ここで暮らす子どもたちのためには、その場その場をやり過ごすのではなく、いろんな事物や人間関係と折り合いをつけながら、生活していく経験が大事。本来なら一番親しい、頼れる大人である親との関係がうまくいかなかった子どもたちなので、自分を預けられる大人を求めている部分があり、その点はとても敏感です」と施設の要点を説く。

 折笠さんは仕事のやりがいを「子どもと関わり、いっしょに楽しさが共有でき、笑顔に接することができるところかな」としつつ、「経験も不足しているので、子どもに応じて対応していくのが難しい。親を求めている部分もあるので、親でもないし若いんで大変なところもある。結局一人の大人として対応していくことが大事かな」と考えている。

 桑原さんは「子どもたちとは、いろんな関わり方がある。経験が長い年配の職員もいるし、若くて元気なことや年齢が近いから果たせる役割もある。信頼関係が築けることが大切で、人間性の幅が生きる仕事。折笠さんは施設のグラウンドでよく遊んでくれている。それもいい点」と指摘。さらに「施設の良さはみんなが『チーム』というところもある。数値化できない仕事で、やりがいも単純には数値化できない難しさがある。ここで育った子どもが将来、家庭を築いたころに、こちらもやりがいを感じることになるのかも」と息の長い視野で語る。

 折笠さんの今の視線も「楽しいことも苦しいことも含めコミュニケーションをもっと深めて、信頼される人に」と重なる。

舞鶴学園
1946年、戦災孤児らを保護する「舞鶴自彊学園」がスタート。48年、児童福祉法制定により養護施設に。52年、社会福祉法人に認可、現名称に。2001年、現在地に新築・移転し、「小舎制」を導入。相談事業などを行う「中丹こども家庭センター」、幼保連携型認定こども園「タンポポこども園」を含め3施設を運営。0773(62)1315