2020.07.20
2020.07.20
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
ACT―K主宰・精神科医 高木 俊介
私たち医療や介護という仕事は、コロナ禍の中でも支援相手と直接対面しなければならない。医療はもちろん、たとえばお年寄りの入浴介助などは大変だ。独居の障害者の生活を支えるには、長時間の密な介助がいる。ひきこもっている人の援助では、一緒に外出できることが不可欠だ。
この間、利用者にもスタッフにも発熱し体調を崩す者が頻繁に出た。そのたびに、現場は厳しい緊張を強いられた。必要な支援がどこまでできるか、誰が最もリスクを負うのか、誰がどう決定する責任を持つのか? 何よりも、利用者の命と生活は守られるのか?
多くの事業所の中には、コロナ感染の疑いがあるや、援助を中止するところもあったと聞く。ぎりぎりの決断ではあろうが、利用者中心という理念を忘れていないか。感染よりも社会の非難を恐れていないか。
自分たちの職場は大丈夫だとは言い切れない。京都での流行が小康を得た機会に、スタッフ全員でこの間の支援を振り返ってみた。話し合いの前提として、各人が抱く不安の種類や程度はそれぞれに違うことを認め合うことを確認した。
マスク、手洗い、社会的距離の保持は徹底した。しかし、毎日のミーティングは、相手のニーズを共有しチーム支援をするために必須であり、テレワークにはしなかった。そのために不安を感じていても言い出せないままでいると、支援に悪影響する。体調不良で休んだスタッフは罪悪感を抱くが、それも解消されねばならない。ストレスがたまると、相手の多少のハメ外しも非難してしまう…そのような体験や感情を話し合うことで、しんどかったこの数カ月にも、自分たちが必要な支援をしてきたことに自信を持てた。
コロナ後の世界は、対人支援の仕事がますます重要になる。医療、介護にたずさわる人たちが、リスクと向き合いながらも必要な支援をひるまず届けるための合意をつくっていくことが大切だ。これからも襲ってくるであろう不確実な未来を、持ちこたえるために。
たかぎ・しゅんすけ氏
2つの病院で約20年勤務後、2004年、京都市中京区にACT-Kを設立。広島県生まれ。