2020.10.14
2020.10.14
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
関西大教授 所 めぐみ
「この実習を通じて私もソーシャルワーカーになりたいと思いました」。実習の最終日。企業就職を考えていたある学生がはっきりとした口調で言った。素直にうれしかった。。
私は勤務する大学で社会福祉士の養成教育に携わっている。学生たちは、講義、演習、実習という方法で、社会福祉士として必要な価値・知識・技術について総合的に学ぶ。多くの学生にとって特に実習は、その先の自己のキャリア形成につながる気づきと学びと経験をもたらす貴重な機会である。本来であれば学生たちは福祉事務所、児童相談所、病院、福祉施設、社会福祉協議会など、社会福祉の現場で実習を経験する。ところが今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大学など社会福祉士の養成校では、実習期間のすべてあるいは部分的に、現場ではなく学内で実習を行わざるをえなくなった。勤務校でも24日間にわたる学内代替実習を行った。
もともと社会福祉士の実習では、いずれも規定の要件を満たした実習先の実習指導者と大学など養成校の実習担当教員が、連携、協力して学生の実習指導を行う。実習の事前、実習中、実習後の指導において、実習中のプログラムの作成や指導を主に担うのは実習指導者である。学内実習ではあるが、今年もプログラムの作成や実習中の指導についても実習指導者の方々のお力を借りて行った。しかしいつもと違いプログラムづくりも協働で行った。コロナのため特別に代替実習が認められたが、国家資格であるためガイドラインをふまえて学生が必要なことを学べるよう何度も打ち合わせをした。現場とオンラインで結び、また動画やさまざまな教材も作成し活用した。学生たちは現場で利用者や地域の方々との直接的なかかわりを持って学ぶことはできていない。しかし足りないことを自覚的に考察にいかし、協同学習を通じてお互いからも学びあった。
対面授業が再開し、実習の事後学習が始まった。ちょっとワクワクしている。
ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。