2020.11.23
2020.11.23
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
弁護士 尾藤 廣喜
国内の新型コロナウイルス感染者の1日当たりの数が、12日に最多人数を更新して1661人となり、以降も増加し、感染拡大の「第3波」が到来していると言われている。汚染が、首都圏、近畿圏、名古屋、福岡などだけでなく、北海道、青森、長野、岡山、沖縄など全国で増加していること、年代でも全世代に広がっていること、さらに、外国人コミュニティーでのクラスター発生や感染源の特定ができない割合が多いなど、第2波に比べて、より深刻な状態になっている。新型コロナは、社会構造の弱点を浮き彫りにすると言われているが、今こそ、この弱点に焦点を合わせた対策が重要だ。
まず、医療機関や介護施設の深刻な経営危機に対する経済的支援の拡充、保健所の「再編」によって弱体化した地域の保健・疾病予防機能の根本的強化が必要である。また、失業が、80万人とも言われる非正規労働者の雇用減に多く表れており、「持続化給付金」制度の継続、「休業支援金・給付金」の制度改善、家賃を支払えなくなった人のための「家賃支援給付金」制度の延長も必要だ。また、生活保護制度の利用をより簡便にすることも重要だ。さらに、文化芸術関係のイベントなどが壊滅状態になっており、その支援が「継続支援事業」程度しかないことも問題だ。そして、高すぎる授業料に苦しむ多くの大学生などへの根本的な支援も必要だ。観光支援制度である「Go To トラベル」も大手旅行業者や高額な宿泊施設に利用・利益が偏っているとの指摘やこれが感染を全国に広げているとの強い批判があり、見直しが必要だ。
取り上げてみれば、これまで非正規労働者の拡大という形で雇用構造を変え、社会保障、文化・芸術活動への支援削減を進めてきた国の政策の問題点が噴出しているといえる。これは、京都市の財政方針、観光政策についても当てはまる。「新しい生活様式」にあわせた、国、自治体の政策の転換こそが求められているのではないか。
びとう・ひろき氏
1970年京都大法学部卒。70年厚生省(当時)入省。75年京都弁護士会に弁護士登録し、生活保護訴訟をはじめ「貧困」問題について全国的な活動を行っている。