2021.03.22
2021.03.22
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
関西大教授 所 めぐみ
Love Myself(自分自身を愛そう)はユニセフ(国連児童基金)による子ども・青少年に対するあらゆる形の暴力の撲滅を目指したキャンペーンの標語。今や世界的スターとなった韓国のグループBTS(防弾少年団)がユニセフとパートナーシップを結び、世界の子どもや若者にメッセージを伝えている。
「自分自身をまず愛そう」。BTSのリーダーRMは、2018年国連本部でのスピーチでこの標語をあげる理由として「『本当の愛は自分自身を愛することから始まる』という信念があるから」と伝えた。すべての若者に、自分自身の中に愛を見つけそれを他者に広げるように呼びかけた。愛を伝える最初のステップは、若者が相互に助け合うこと。メンバーのVは「自分を愛そうとすると、支え愛してくれている周りの人たちのその愛に気づく」と語る。
彼らのメッセージは、実力ある歌とダンスパフォーマンス、ソーシャルメディアを活用したインタラクティブなコミュニケーションなど多様な形で届き広がる。いつもファンへはありきたりの感謝の言葉でなく、ファンがもつ行動力と熱意の力を認め、ファンの力が彼らの成功やキャンペーンの進展を成し遂げていると伝える。そして「愛してます」と。目標に向かい真摯(しんし)に向きあい、メンバー同士支えあい、過ちや失敗もある過去の自分を認め成長しようとする彼らの姿は、自分もそうありたいという思いにさせるのだろう。
体罰、いじめ、虐待などの暴力にさらされている、生きづらさをかかえ、孤立している人に「自分を愛そう」は響かないかもしれない。それでも「希望はある」と全ての若者に訴える。もうすぐ新学期や新生活がはじまる。しんどくなっている人、その人の近くにいる人も、自分自身を愛し大事にしよう。そして自分も人も大切に認めあいたい。そのためにもSpeak yourself(自分のことを伝えよう)。これも彼らからのメッセージ。大人の私も受け止めた。
ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。