ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

ひとが人を支えているまち

2021.05.31

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

関西大教授 所 めぐみ

いくつかの地域で地域福祉に関わる計画の策定に関わっている。コロナ禍で予定されていた会議が延期や中止になったり、書面決議やオンライン会議への変更があり、必要な協議が十分できないことが度々ある。

諸条件がそろわず書面等による協議にせざるをえないこともある。できるだけ対面での協議にかわるやりとりができるよう、書面でも自分たちの活動をふりかえり、自分の意見を伝え、他者の意見や思いを聞き、考え、また意見を伝えられるように事務局に工夫していただいている。

ある委員会。委員のお一人、長く校区福祉委員会活動をされているAさん。事務局が依頼したフォームへの記入以外にも、別紙を提出してくださった。A4の紙1枚に手書きで七つほどの地域での出来事が書かれていた。

Aさんが書かれたもので、ご自身が体験、感動したことを記入したとある。そこにはAさんがお住まいの地域のさまざまな方々(もちろん無記名・誰かはわからない)が登場する。その一人一人が近隣の人や友人、また自分たちの身近な地域を気づかい、さりげなく、時に協力し合って、支え合っている具体的なはなしだ。そして最後に、「こんな地域がいつまでも続いてほしい」とある。

コロナ禍でみんな大変な中でも、このまちでは、「ひとが人を支えている」ということがよくわかった。そこには写真やイラスト、キャッチーな言葉はないが、人の表情や手のぬくもりのようなものを感じた。こんな方たちが何人もおられる地域。すてきだ。これを読んで何だかあったかくなった。

またAさんが、地域のさまざまな人たちの言葉を受け止め、行動をしっかり見ておられることがよくわかる。そうした人たちが地域におられることに感動され、大事に思っておられるAさんのような方がおられることで、きっと地域の方たちは元気になられていることと思う。

ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。