ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

声を紡ぎ未来を拓く検証を

2021.10.25

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

関西大教授 所 めぐみ

「関西社協コミュニティワーカー協会・社協現場の声をつむぐ1000人プロジェクト」による『新型コロナウイルス感染症特例貸付に関する社協職員アンケート報告書』。新型コロナウイルスの発生による休業や失業等による収入減少した世帯を対象として昨年3月に開始された新型コロナウイルス特例貸付において、相談者の急増と度重なる運用の変更、貸付による支援へのジレンマ、疲弊感を抱えながらも最前線で奮闘する全国の社会福祉協議会職員による、よりよい困窮者支援につなげたいという切実な声と未来への願いを基に提言が示されている。

調査は今年1月から2月に実施され、2月の中間報告、3月の速報と時機を逃さず発信され、7月には報告書がPDFで、その後紙媒体でも発刊された。この間にテレビ、新聞などのマスメディアによる報道に加え国会の委員会での引用もなされ、コロナ禍での困窮者の実情、それを支える現場の社協職員の状況などを世に知らしめ、特例貸付、生活福祉資金のあり方の議論の契機づくりに貢献した。

プロジェクトの発端は、現場職員の情報・意見交換の場づくりの必要性を共有した大津、東近江、大阪・寝屋川の3人の市社協職員の小さなグループ。やがてその輪をひろげ、さらにはプロジェクトの発足へ。社協職員の調査を始めるにあたり、めざす状態・変化をビジョン(大目標)として描き、調査はゴールではなく、ビジョン達成のための礎であり、次につながるアクションのひとつとして進めているという。

8つの提言の最後には、貸付現場と協働した制度検証とそれに基づく改善をとある。報告書のタイトルには「声を紡ぎ、未来を拓(ひら)く」とある。調査はまずは全国の社協職員の声を紡いだ。そして生活困窮の状況にある地域住民や、その他の支援関係者・組織等とも声を紡ぎ、未来を拓こうとしているのだと思う。

今、検証作業の必要性がいわれるなか、こうした取り組みから学び、いかしたい。

ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。