ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

社会的課題と公共図書館

2022.08.22

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

関西大教授 所 めぐみ

ヘルシンキ中央図書館は国際図書館連盟の「2019年公共図書館賞」を受賞し、国際的注目を集める。18年12月、国の独立百周年を祝い開館した。人々が集い、活動や体験を楽しめ、共に過ごせる空間が多数あり、地域に活気を生み出し、多様性を付加している。

3階建ての建物には、インフォメーションカウンター、カフェ、映画館、展示場やイベントホール、ワークショップができる会議室やスタジオ、個室、3Dプリンター、ミシン、パソコンなど設備のそろった工房、「本の楽園」をイメージしたフロア、子どものためのコーナーなどが、柱や壁のないオープンスペースに多用途・多目的に対応できるように設計されている。

市民バルコニーは、広場を挟み向かいの国会議事堂と同じ目線の高さとなる。建設コンペの前に実施された市民のヒアリング調査の結果から図書館の機能を検討し、実際のコンペも市民が投票できた。市民の希望、期待が反映されている。

首都ヘルシンキはもちろん、他の地域にも魅力や特色がある図書館が数多くある。移民が多い地域で、設置書籍はもちろん、スタッフやボランティアが地域の多文化・多言語に対応してサービス提供や地域を巻き込みイベントを開催している図書館、またLGBTQ関連で充実化を図っている図書館もある。そしてそれらの図書館が連携してサービスを提供している。

こうしたフィンランドの公共図書館の活動やサービスは、16年改正の公共図書館法に基づく。年齢構成の変化や移民など、地方や地域の構造変化への考慮から、公共図書館の運営環境の改善、アクティブな市民性、民主主義、生涯学習の促進を目的に法改正がなされた。コミュニティー意識や多元性、文化的多様性をより重視した活動やサービスの提供が法で求められている。また図書館間の連携協働による当該地方・地域での図書館機能の発展についても法は定めている。市民・地域にとっての公共図書館。改めて問いたい。

ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。