ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

公園があるから

2022.10.31

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

関西大教授 所 めぐみ

夏からほぼ毎朝公園でラジオ体操を続けている。ある公園で数名の高齢者が集まったグループがいくつか体操をしていた。久々の散歩中にその姿をみかけて、隅っこでつれあいと2人、身体を動かした。デスクワーク漬けの身体。節々が硬い。第1と第2体操を続けてやってみた。つれあいは第1体操も結構忘れているようだ。私もところどころ自信がない。

その日から3カ月たった。朝が弱いつれあいは「体操へ行こう」とすっくと起きるようになり、肩の調子がよくなってきているのは体操のおかげじゃないかといっている。家では2人でラジオ体操の動画を見て、わかっていたつもりの動きが本当は違っていたことなどに改めて気づき、おかしな歓喜。でも家ではなくやはり公園に出かける。

職場と寝場所との行き帰りの毎日。忙しさからちょっとの時間の散歩すらしていなかった私が出会えた、身近にあったのに知らなかった世界。親しい人がいるわけでなく、近くにいなくても遠くからお互いが見える絶妙な距離感。ラジオ体操の間のわずか15分ほどの間に、毎日あるいは時々現れる人々。小学生から中高年、高齢者。ある人は1人で、また2人やグループでやってきたり、ペットをつれてきたり。体操、トレーニング、キャッチボール、ベンチでパンをかじる、花壇を手入れする…などさまざまだ。

いつもみんなに「おはよう」と声かけ、第1体操が終わると第2体操ではなくウオーキングをはじめる「おはようおじさん」。夫の出張中、一人で出かけたときには「おはよう。今日はひとり?」と声をかけられた。毎日散歩にやってくるトイプードル。別の犬と戯れてうれしそうに走っていたある日、うれしさ余ったのか私のところにもやってきた。「はじめて行きましたね」とは飼い主さん。話したことはなかったけれど、お互いに見ていたのだなあ。

都会でも土や緑にふれられ、人を感じられる。暮らしの中で公園ってやっぱり大事だな。

ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。