2022.12.13
2022.12.13
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
さわやか福祉財団 会長 堀田 力
日本は、自己責任で経済繁栄をめざす競争社会から、すべての人の幸せをめざす地域共生社会へと、大きく方向転換しなければならない時期に来ている。
そのタイミングをとらえわがさわやか福祉財団は、大阪、神奈川、東京と3回にわたり、「いきがい・助け合いサミット」を開催し、地域共生社会実現の道を探った。毎回全国から3千人を超える有志が参加し、住民主体で支え合う地域づくりを進めるという王道を確認し、住民の動きを引き出す拠点を全市町村につくる提言を共有した。
30年間、私が追い求めてきた共助・共生の社会への道筋に一つの区切りがついた。この機会に、さわやか福祉財団会長を引くことにした。今や88歳。耳と足が不自由となり、組織に老害を及ぼしたくない。清水肇子理事長にすべてを委ね、一切口を出さない決心である。
とはいえ、目と口はまだ使える。地域共生社会の実現に向けて、言いたいことは山ほどある。それが老害だと言われれば致し方ないが、私としては、1人になっても生命あるかぎり務めるほかないと感じている。
特に今は、社会保障の諸制度の中でも日本が世界の先進諸国に大きく後れを取っている子ども・子育て政策について、これを大きく前進させるチャンスの時である。はじめての大チャンスであり、これを逃すと日本の活力や日本人の幸せが消えていくおそれが大きい。
子どもを産み育てたいのに社会環境が整っていないためそれができない人が増え、また子どもたちは、自分の望みを追いかけることができず、型にはめられ指示を待つおとなしい人間に育てられつつある。そうならないようにするのは老人の責務ではなかろうか。自分たちがそんな社会にしたのだから。
まず子どもたちが、そして女性たちが思うように生きられる柔軟な社会を目指していれば、老害おやじにならずにすむかもと期待している。