2023.04.11
2023.04.11
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
立命館大教授 津止 正敏
統一地方選挙の真っ最中。いつも以上に特段の関心をもって選挙公報に目を凝らしている。「ケアラー支援」について声を上げている候補者はいないのだろうか、と。
「埼玉県ケアラー支援条例」(2020年3月施行)以降、「ケアラー」という言葉が「介護者」にとって代わるかのように全国に広がった。ケアを担う子どもたちを総称する「ヤングケアラー」は21年の流行語大賞にもノミネートされるなど社会現象にもなっている。同種の条例制定に動いた自治体もすでに全国16カ所に上り、近隣でも奈良県大和高田市が4月1日から施行。関西では初めてだ。
先行自治体に続け!と、私たちも昨年4月に「ケアラー支援条例をつくろう!ネットワーク京都」を立ち上げた。条例制定の機運醸成を目的に、学習会や市民フォーラム、啓発資料集の発行などささやかな取り組みを続けてきた。京都に拠点をおく18分野のケアラー当事者・支援者組織のリーダー層25人(4月1日現在)を共同代表とする、京都らしい条例をつくろうという運動だ。
京都には、認知症の人や障害児者・難病者・不登校・ひきこりの人その他ケアの必要な人と暮らす家族会などケアラー組織が活発に活動している。男性や子ども・若者など新しいケアラー組織も生まれている。ただ、こうしたケアラー関係者が分野・世代等を超えてつながり、互いの課題への理解を深めながら、共通の目標をもって行動を起こすという今回のようなネットワークは、あまり聞いたことがない。珍しいだけでなく、とても意義のある取り組みだ。
ケアラー支援条例の全国的な広がりを見れば、京都の自治体でも早晩作業が始まるに違いない。私たちもそのことを切に願っている。ただ、それは首長や議会関係者に「お任せする」ということと同義ではない。
「私たちのことを私たち抜きで決めないで」(国連障害者権利条約)という運動スローガンを、京都でも志高く掲げたい。京都らしさは「ボトムアップ」だ。
つどめ・まさとし氏
1953年、鹿児島県生まれ。立命館大学教授。大学院社会学研究科修士課程修了。
京都市社会福祉協議会(地域福祉部長、ボランティア情報センター長)を経て、2001年から現職(立命館大産業社会学部教授)。2009年3月に「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」を発足させ、事務局長を務める。著書に『ケアメンを生きる – 男性介護者100万人へのエール – 』『男性介護者白書―家族介護者支援への提言 – 』、『ボランティアの臨床社会学―あいまいさに潜む「未来」 – 』、『子育てサークル共同のチカラ – 当事者性と地域福祉の視点から – 』など。