2023.11.27
2023.11.27
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
ACT―K主宰・精神科医 高木 俊介
成年後見制度の見直しが始まっている。未曽有の高齢化社会の到来に備え、介護保険の発足とほぼ同時に作られた制度だ。施行から20年以上たち、利用者が激増するとともに多くの問題点がみえてきた。
成年後見制度は、認知症の高齢者や、精神障害や知的障害によって判断力が低下している人の財産と権利を守るための制度である。これによって守られている高齢者障害者は多い。後見を行う人たちは、多くは熱意をもって利用者の権利をしっかり守っている。待ったなしの高齢化に直面する日本政府は、制度の利用を積極的に後押ししている。
しかし、多くの関係者が衝撃を受けたのは、国連障害者権利擁護委員会による日本への勧告だった。精神科の強制入院の撤廃などとともに、成年後見制度にも厳しい批判があったのだ。
成年後見は、それまでの禁治産制度があまりに差別的であったので、能力の低下や障害があっても、あくまで本人の意志を援助するという理念のもとに作られた。後見と並ぶ「保佐、補助」という制度は、最大限本人の意志や希望を生かすための制度類型である。当初はこれが制度の目玉であったが、結果は本人への制限が最大となる後見ばかり使われているのが現状だ。
また、誤解している関係者も多いが、この制度も民法も入院や施設入所に関する後見人の代諾(だいだく)は認めていない。これを可能にしているのは、精神保健福祉法など他の法律である。後見人が入院や施設入所を勧めたり代諾したりすることは、成年後見の趣旨に反するのである。しかし、現実には入所や入院のために後見が行われることが多い。
また、この制度は本人の能力が持続的に障害されていることが前提とされていて、一度決まった後見を取り消すことは難しい。しかし、特に精神障害では能力が改善することも多い。
これらを含めて、制度を見直すことは必須である。特に、本人の意志を丁寧に尊重した援助ができるものにしなくてはならない。守るべきは人権、である。
たかぎ・しゅんすけ氏
2つの病院で約20年勤務後、2004年、京都市中京区にACT-Kを設立。広島県生まれ。