2023.12.12
2023.12.12
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
関西大教授 所 めぐみ
「人の命助けられるなんて、ほんま自分の親って、すごいと思うわ」。母親の緊急救命対応の経験について、誇らしげに伝えてくれる小学生の男の子。先日ゼミ生たちと参加したある社会福祉協議会主催の防災イベントで出会った。
私は、救命措置である心臓マッサージ(胸骨圧迫)の体験を行うブースを手伝った。胸骨マッサージ用の人形を使って、参加者に実際に体験してもらう。どこに手を置き、どれくらいの強さで、どんな早さとリズムでマッサージを続けたらいいかをつかんでもらう。「でんでん虫むし、かたつむり~」で習いましたという方。よいリズムでできるよう会場でも流した「アンパンマン」の主題歌もよく活用されている。慣れた歌を口ずさむことで過度の緊張が緩むとともに、よいリズムが保てる。
ちょうどよい強さ、そして速さでできているかどうか。これが可視化できるアプリをWi – Fiでつないでの練習。成人の場合であれば5センチぐらい胸骨を押す、と習っても、なかなかわかりにくい。ところがこのアプリを使うと、自分の押し加減がどれくらい弱いか強いのかが一目で分かり、ちょうどよい加減がわかる。また早ければいいというものではない、ということをわかってもらうため、アプリでは、ちょうどよい強さと速さでできている人が1番になれるというゲーム感覚を取り入れながら心臓マッサージの練習ができる。年代にかかわらず参加者のやる気負けん気スイッチが入った。盛況であった。何度もやりに来る女の子もいた。こういう時はどうしたらいいかなど、大人からは具体的な質問が出た。
救急車が到着するまで平均で約9分かかるという。その間1人でマッサージを続けるのはかなりキツイ。このことを体感してもらえると、自分だけでなく身近な人がみなできるようになることの必要性を実感できる。学校や職場や地域で、みんなでやれれば救える命があるんだ。市民の力で。
ところ・めぐみ氏
1967年生まれ。同志社大文学部社会福祉学専攻卒。関西大人間健康学部教授。専門は地域福祉方法論、福祉教育。