2024.01.22
2024.01.22
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
弁護士 尾藤 廣喜
元日早々に起きた能登半島地震には、言葉を失った。15日現在、死者222人、安否不明者22人とされているが、被害の全体像は、いまだ十分にわかっていない。津波、さらに大規模火災の発生。多くの家屋が倒壊し、道路は寸断され、救援作業も思うにまかせない。これに寒さと雪が追い打ちをかけている。水道、電気などの回復も困難を極め、救援物質も不十分。避難所での生活も限界で、2次避難も始まっている。そして、災害関連死の拡大が大きな問題になっている。
このような中で、やらなければならないこと、やってはならないことが徐々に明確になってきている。
第1には、国の責任での住民に寄り添った総合的対策の実施が必要だ。国は、「激甚災害」と「特別非常災害」に指定し、予備費を投入することを決めてはいるが、それだけでは不十分だ。国の責任でのインフラの整備、住宅再建援助についての制度改正、さらには、当面の生活費の援助と、雇用、営業など「なりわい」の保障が必要だ。
第2には、長期的に医療、介護、教育、防災など基礎的サービスの充実が必要だ。全国で行われている保健所・病院の統廃合、消防団員の減員、学校の統廃合、さらには、医療・介護給付の後退など基礎的サービスの縮減は、大災害が起きた場合、地域の壊滅的な崩壊を招きかねない。
第3には、原子力発電所の廃止だ。能登半島の北部海岸では、4メートルもの隆起があったという。志賀原発のわずか手前で隆起がおさまったようだが、それでも、大量の油漏れなどの被害が発生している。予定されていた珠洲原発がもし立地されていたらと思うとぞっとする。想定外の地震は、日本のどこでも起こりうる。原発をこの国に作ること自体が無謀なのだ。
また、南海トラフ地震発生が危惧(きぐ)される中で、臨海の埋め立て地に多額の資金を投入して万博の施設を作ったりIR(総合型リゾート)にするなど論外のことだ。
びとう・ひろき氏
1970年京都大法学部卒。70年厚生省(当時)入省。75年京都弁護士会に弁護士登録し、生活保護訴訟をはじめ「貧困」問題について全国的な活動を行っている。