2024.05.14
2024.05.14
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
立命館大名誉教授 津止 正敏
4月遅くまで桜を愛(め)でる日が続いて、ゴールデンウイークに関心が移り始めた頃、嬉(うれ)しいニュースが舞い込んできた。世間的にはどうか知らないが、ちょうど2年前に「ケアラー支援条例をつくろう!ネットワーク京都」を発足させ小さな市民活動に取り組んできた私たちにはとてもとてもビッグな朗報だった。
発信者は京都市会。議員提案によるケアラー支援条例の制定の取り組みを進めていくということが4月26日の市会ホームページに掲載された。そこには、①ケアラー支援条例を市会議員全員の共同提案により、令和6年9月市会において全会一致で可決することを目指す。②5月中に各会派の代表者によるプロジェクトチームを発足させる。③関係団体からの意見徴収やパブリックコメント等を実施する、等々記されていた。翌日には本紙朝刊も「京都市会 ケアラー条例制定へ」とその概要を報じた。
これまで、京都市会の本会議や委員会で3度に渡って与野党各会派の代表議員によるケアラー支援の条例化に関する質問が行われているが、理事者から条例制定の意志表明を聞くことはなかった。4月の環境福祉委員会でも、ケアラー支援の必要性認識は示しつつもすでに諸々(もろもろ)の事業に取り組んでいるとして、直ちに条例制定という具体的な考えはないと応えていた。
そうであれば、条例制定を求めるケアラー当事者や市民の声に議会はどう向き合っていくのか。その結論が今回の全議員の共同提案による条例制定という判断だったに違いない。
5月中に発足させるというプロジェクトチームは、市会と議員の役割を定めた京都市会基本条例(2014年)を根拠にしている。この条例の前文には、京都市の町衆の自治の歴史と伝統にふれつつ憲法に定める地方自治の本旨の実現を目指し市民の負託にこたえていく、という市会の決意の表明がある。議会の魂ここにありの宣言だ。
実りの秋が待ち遠しい。京都市会のご英断に心からの敬意を表します。
つどめ・まさとし氏
1953年、鹿児島県生まれ。立命館大学教授。大学院社会学研究科修士課程修了。
京都市社会福祉協議会(地域福祉部長、ボランティア情報センター長)を経て、2001年から現職(立命館大産業社会学部教授)。2009年3月に「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」を発足させ、事務局長を務める。著書に『ケアメンを生きる – 男性介護者100万人へのエール – 』『男性介護者白書―家族介護者支援への提言 – 』、『ボランティアの臨床社会学―あいまいさに潜む「未来」 – 』、『子育てサークル共同のチカラ – 当事者性と地域福祉の視点から – 』など。