ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

「一人じゃないよ」と支え/イベントで悩み、不安を発散(2020/09/21)

2020.09.21

  • 広がる 地域の輪

京都こどもきょうだい会「えるも」

きょうだい会の開催前に、参加者の名札を作るきょうだい児と、えるものスタッフたち(2019年5月26日、亀岡市)=提供写真

 難病や障害のある兄弟姉妹を持つ子どもたちを指すことばとして、「きょうだい」が児童福祉の世界でも近年、定着してきた。

 京都こどもきょうだい会「えるも」は、寂しさや不安など複雑な心理に揺れる小学生のきょうだい児を主な対象に、その家族も含め支援を続けている。代表の村上珠理さん(25)は、障害のある兄を持つきょうだいの一人。学生時代から、NPO法人「しぶたね」(大阪府大東市、清田悠代理事長)が行う支援活動に参加していた。

 作業療法士と保育士の資格を取り、亀岡市の福祉施設で働きながら、ボランティアを続けるうち、京都府内の幼いきょうだい児たちに支援がほとんど届かない現実を見て2018年、仲間たちと共に「えるも」を設立した。

 きょうだい児の支援はなぜ重要なのか。多くの専門家は次のように指摘する。兄弟姉妹の誰かに病気や障害があると、親や周りの関心はその子に集中しがちになる。健康なきょうだい児の心には、孤立感や嫉妬のほか「周りの友人やよその家庭とは違う」と感じる恥ずかしさ、「自分は要らない子」と思い込む自己肯定感の低下、「健康な自分が頑張るべき」と考えるプレッシャーなどが生じやすいという。

 「きょうだい児たちは、全員がそうではないけど、人知れず苦しんだり、無理に頑張ったりしています。成長後に不登校や精神不安定に陥るケースもあるので、早い段階のケアが大切。『自分は一人じゃない』と気付かせてあげるのが支援の第一歩です」。村上さんは自らの経験を踏まえそう主張する。

 「えるも」の活動は、「きょうだい会」と名付けたイベントの開催と、支援学校などに招かれて行う啓発講演が2本柱。親の相談を受けたり、きょうだい児向けの絵本を集めた「えるも図書館」を開くこともある。スタッフは、きょうだいが9割を占める。

 これまで亀岡市や舞鶴市で開いたイベントには、きょうだい児510人が参加。風船サッカーなど思い切り体を使う遊びやゲームで、悩みや不安を発散している。

 遊びを通じ自分が主役になったり、同じ境遇の仲間と交流して、「一人じゃない」と感じたきょうだい児たちは毎回、弾けるような笑顔を見せるという。イベントで、料理づくりを手伝う女性スタッフの浅野香月さん(50)は「頑張っているきょうだい児ほど心の深いところで疲れたり傷ついています。一般の人たちにもぜひ、そこを理解してほしい」と話す。

 きょうだい支援の発祥は米国とされ、理論的指導者のドナルド・マイヤーさんらが、シブリング(きょうだい)とワークショップを組み合わせた支援プログラム「シブショップ」を1982年から実践。世界400カ所以上に普及させ、えるもは昨年、国内5番目のシブショップ団体に認定された。

 新型コロナウイルスの影響で支援活動は2月以降、止まっていたが近く再開する。10月には京都市でオンラインによるサポーター研修会を予定。将来は、支援対象を中高生に広げる計画も温めている。

えるも
2018年、亀岡市で設立された任意団体。現在は京都市左京区に本部を移した。病気や障害のある兄弟姉妹を持つ子どもと、その家族の支援を続けている。法人化も構想中。スタッフは約20人。Eメールkodomo_kyodai_elmo@yahoo.co.jp