2021.09.27
2021.09.27
テレフォンボランティアさくら
デジタル通信の発達で、従来型のコミュニケーション手段は隅に追いやられ会員制交流サイト(SNS)全盛といわれる今、声を交わす電話だけで、互いの心を通わせ安心と信頼をつないでいく。京都府大山崎町で20年目を迎えた「テレフォンボランティアさくら」は、その同じスタイルを、これからも守り続けるという。
「さくら」の活動は1人暮らし、または「家族がいても日中は1人」という高齢者に登録してもらい、安否確認するのが主眼。同時に「なんでもしゃべれる」話し相手の役割を果たしてきた。60~80代の会員10人で、大山崎町福祉センター「なごみの郷」内にある町社会福祉協議会の一角を拠点にしている。
発足は2002年5月、町社協が開いた「いのちの電話」と見守りにかかわる講座がきっかけになった。受講した企業退職者や主婦たちが、「自分たちも何かやれることを」と一致。阪神大震災の後で、ボランティアの役割に関心が高まっていた時期だった。大山崎町の町花・サクラにちなんで名称を決めて以来、週3回の電話活動日を欠かさず守ってきた。
「お変わりありませんか、で始まって時候や暮らしの話に移ります。声のトーンや話しぶりから体の変調を感じ取り、気付いたらすぐに町社協に連絡するのです。実際、相手の方の口調がしどろもどろになったので、社協の職員さんに走ってもらい、事なきを得たこともありました」。会の代表役「もし友」を務める竹内和史さん(70)は、相手の緊張を解き自分のペースで話してもらうよう導くのが会話のコツだと明かす。
活動に当たっては堅いルールがある。自分たちの名前や素性は明かさず、会話の内容を他へ漏らさないこと。電話で親しくなり「一緒に飲みに行こう」「旅行はどうか」と誘われても、やんわり断り応じることはない。批判や主張には相づちを打ちながらも決めつけず、異論をさしはさむこともしない。
創設メンバーの一人で、竹内さんとともに「もし友」を務める深井忠義さん(77)は、声だけの関係は、相手に深く立ち入らないのでかえって良好なコミュニケーションが可能、と話す。「テレビ電話やLINE(ライン)なら、互いの顔も見えますが、見られたくない部屋の様子も垣間見ることになる。信頼して心おきなく話してもらうためにも、互いに詳しく知らない部分があってよいのです。ふだん話す機会が少ない利用者さんの聴き役に徹するのが、使命と考えています」
ボランティア団体として、常に新しい知見や体験を取り入れようと、研修会、講演会は機会あるごとに開催。八幡市や井手町などのテレフォンボランティア団体と交流会を持ったり、他市町からの見学も積極的に受け入れてきた。
悩みは会員、利用者数の低迷。当初20人以上あった利用者は近年、ひと桁台に落ち、今秋は新しい募集チラシを作ってまつりイベントなどで呼びかける。コロナ禍で週1回(水曜日)に減らしている活動は、緊急事態宣言中に限り町社協へ委託する形(あんしんコール)で続ける。
「テレフォンボランティアさくら」
2002年、京都府大山崎町内の有志24人で設立。電話で安否確認と話し相手を兼ね、独居の高齢者らとつながる。平常の活動は週3回、会話は最長1回30分。利用は登録制で無料。連絡先は大山崎町社協075(957)4100