ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

個々のペース尊重 ゆったりと/駅清掃や自主製品販売(2021/11/16)

2021.11.16

  • 広がる 地域の輪

障がい者多機能支援事業所あじさい園

あじさい園の広い作業場で、さをり織などの自主製品づくりに励む人たち(11月5日、南丹市八木町八木)

今春、橋上駅舎の完成で面目を一新したJR八木駅(南丹市八木町八木)で毎朝、ほうきやバケツを手に通路やトイレの清掃に打ち込む若者たちの姿がある。「いつも、ありがとうね」。改札へ向かう通勤の人からは時おり、温かい声がかかる。

清掃しているのは「あじさい園」で就労訓練などに励む利用者の人たち。駅舎の設備、自由通路などを管理する南丹市から4月に清掃の業務委託を受けた。園から八木駅までは歩いて1分の距離で、毎朝3~5人が駅舎内で汗を流す。

「自分たちも利用する駅をきれいにする仕事はやりがいがあり、社会貢献の自覚も生まれます。顔が見える仕事なので、私たちの活動を市民に知っていただくよい機会。この仕事をみんなでやり遂げ、地域での信頼度向上につなげたい」。施設長の水口伸介さん(50)は、そう話す。

あじさい園は南丹地域で在宅や支援学校を卒業した若者の就労と居場所を求める声を受けて2000年、旧八木町の町立共同作業所として発足。現在は就労継続支援B型などの認定を受け、南丹市社会福祉協議会が運営する。

利用希望者は障害の種別を問わず受け入れ「安心して過ごせる満たされた日々」の提供を理念としてきた。取り組む仕事は、アルミ缶収集から市広報紙の仕分けまで多岐にわたるが、中でもさをり織と手作りクッキーは、自主製品の2本柱になっている。

4台の織機を使うさをり織は、織りと加工の分業体制が確立され、ポーチやマフラー、バッグなどが、人気商品として定着した。園で約20年、織り作業一筋に打ち込んでいる利用者の男性(42)は昨年、京都市内の大手量販店で開かれたワークショップで講師を務めたほどの腕前。「色や模様を自分で考えながら作業するのが好きです。働きやすい職場なのでずっと続けたい」と、意気込みを語る。

手作りクッキーは原料からの一貫生産で、道の駅などに出荷され園の稼ぎ頭商品に成長した。レギュラー品と商標登録済みのブランド品「ど丹波」の2種があり、地元産の黒豆や牛乳を使った「ど丹波」はプロのパティシエから手ほどきを受けて開発。「おいしい」と評判になり固定客もついている。

コロナ禍は、そんな矢先に襲って来た。宿泊旅行など楽しい恒例行事は全て中止。仕事の注文が止まり事業全体の売り上げは約20%も落ち込んだ。それでも、地域との関係が生き、地元小、中学校の卒業式で使うコサージュ作りを受注するなどして苦境をしのぎ、利用者の工賃減額は回避できた。

園で仕事を覚え能力を向上させた利用者が、一般企業などへ就職を果たすのは一つの目標だが、ここ数年では2人に止まる。「若くて元気な利用者さんが多く今後が楽しみ。でも就職だけを目標とせず、個々のペースが尊重され、ゆったり仕事ができる場であり続けたい」と、サービス管理担当の職員、中居美加理さんは話す。園では今後も生活の質に力点を置いた運営にこだわっていくという。

あじさい園
旧八木町の町立共同作業所として2000年に開所。小規模通所授産施設を経て06年、就労継続支援B型と生活介護の指定事業所へ移行した。さをり織をはじめ、アルミ缶収集、トイレットペーパー包装、駅前駐輪場管理など、事業は多岐にわたる。利用者31人、非常勤を含め職員15人。南丹市八木町八木。連絡先0771(42)5576