ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

やさしさ香る定年後の集い/福祉の催しでコーヒー提供(2022/06/14)

2022.06.14

  • 広がる 地域の輪

下京男塾

時には自分たちでできる簡単な料理講習会も開く(京都市下京区)=提供写真

名称は硬派な印象だが、活動は、いたって穏やかで、やさしいボランティア団体。定年退職後の男性が地域で活躍できる場づくりをと、京都市下京区社会福祉協議会が4年前に開講した地域支え合い活動入門講座「下京男塾」を受講した人らが活動している。

同区のひと・まち交流館京都などの施設で開かれる福祉関係の集いに、メンバーがコーヒー豆や電気ポット、ハンドドリップの器具を持ち込んで、いれ方の腕を磨いたおいしいコーヒーを提供して、福祉施設でも人気だ。高齢者や障害者施設を訪ねて、マジック披露や卓上のゲーム・遊びなどで利用者と交流したりするほか、自分らでもできる簡単な調理を学ぶ講習会を開いたり、ウクレレ演奏を学んだり、囲碁・将棋を一緒に楽しんだりと活動は幅広い。

塾長の岸田和夫さん(74)は「地域ボランティア団体であり、退職した中高年男性の交流団体でもある。4年もやっているとメンバーのつながりも密になってきて、仲間意識みたいなものもできる」。「下京男塾」のロゴ入りTシャツをそろえたり、数人が一緒にテレビののど自慢大会の予選に出ようかと相談しているという。

コーヒーボランティアや交流会は、いつも歓迎される。「帰り際に、握手した手を離さない人もいたほど。そんなに喜んでもらえると、こちらも普段味わえない気持ち、やりがいを感じて、感動しますよ」と岸田さんは話す。

コロナ禍のここ2年ほどは、コーヒーボランティアは自粛してきたが、「また来て」「待っています」という声を聞くとやる気もおこり、再開を待つ。

後期高齢世代にもなれば、病気や体調不良で休会せざるを得ない人もいる。一方で「体調が戻ったので」と活動に復帰する人も。退職後の男性が引きこもりがちにならないようにという会だが、コロナ禍で一層引きこもりが懸念されるようになって、気軽に参加をと呼び掛ける岸田さんが配慮しているのは自由にものが言える雰囲気づくり。「楽しくやっていくのが長続きのこつ。みんなで遊ぶ、学ぶが狙いですから」とも。

スタートした4年前は、京都市内では「はしり的存在」(岸田さん)だったという。その後、右京区や上京区にも同種団体ができ情報交換や交流も兼ねて、同じ福祉イベントなどに参加することも模索している。岸田さんは「地域ボランティア団体として十分に役割を果たせているとは思えないけど」と謙遜しつつ、「メンバーをもっと増やして、これからもいろんなことをやっていきたい」と意欲的。1人暮らしの高齢者からの依頼を受けて電球を取り換えたり庭木の手入れを助けたり、メンバーが2、3度経験した、ちょっとだけのボランティア「ちょいボラ」を、窓口やルールを整備して定式化できないかなどと検討している。

スタート時からサポートする同区社協の職員も「中高年男性と地域のつながりをつくっていこうというのも一つの狙い。そのためには退職前から徐々に地域活動に関われる機会、チャンス作りも必要かな」とアドバイスしている。

下京男塾
2018年開講の京都市下京区社会福祉協議会の講座「下京男塾」の第1期生が結成。現在、60代から80代の24人が在籍。毎月第1金曜午前10時から区社協で定例会を開いている。岸田さん090(5968)7766。区社協の同講座はコロナ禍で20年度から休止、来年度再開予定。