ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

夢中になれる生涯スポーツ/体力や機能向上、仲間作りも(2022/06/27)

2022.06.27

  • 広がる 地域の輪

車いすバスケットボールクラブ「京都アップス」

メンバーの指導で競技用車いすの操作などを聞き、体験する生徒ら(17日、京都市上京区・同志社女子高)

昨年の東京パラリンピックなどで認知度が高まった車いすバスケットボールの愛好団体だ。競技用車いすを操り、車体をぶつけたり、急転回するなどスピード感と迫力満点。技術の高さもあり、競技の人気、関心も急上昇している。

コートの広さやゴールの高さ、競技人数や時間などルールは一般のバスケットボールと変わらない。車輪さばきやシュート技術を磨けば、障害があっても手加減しあうようなこともない。個人の障害程度に応じた持ち点制があり、試合ではコート上の選手の合計持ち点が定められている。障害の程度が違っても等しく試合に出る機会があり、自分の持ち点クラス以上の働きをしようと、練習する意欲につながっている。生涯を通して楽しく汗を流せる競技として、はまり込む愛好者も多い。

代表の山本英嗣さん(54)は「事故や病気の後遺症の後、リハビリ訓練で補える筋肉は生活に必要最低限である場合もある。その点、何かのスポーツを続けられれば、筋力や心肺能力も養え、動きが楽になり、生活もよりしやすくなる。もちろん、仲間ができ、同じような障害を持つ者同士なら、生活の利便のための情報交換の場にもなるし、集まる機会ができればいろいろメリットがある」と障害者スポーツの効用を指摘する。

ここ約2年はコロナ禍で練習や試合が思うようにできず、「身体がなまってしまって、動きを取り戻すのに困る」というメンバーもいるほど健康面でのメリットは顕著だ。チーム名には「前向きに向上を目指す人」との意味を込めている。

競技の紹介を通じて障害者への理解を深めてもらう普及活動にも力をいれている。「障害者というと『弱い人、助ける相手』というイメージかもしれませんが、試合を見てもらえば、こんな動きもできるんだと違った印象を受けるはず。一方、街中では困ることもあるので、その時には、ちょっと手助けしてね」というようなことを率直に話し合える機会にもなるという。

今月17日には京都市上京区の同志社女子高で、同志社女子大OGで全日本クラスの競技力を持つ柳本あまねさん(23)らも加わり、生徒にミニゲームのデモンストレーションや競技の特徴の紹介などを行った。その後、生徒一人一人が実際に競技用車いすに乗り、コーンを周回する体験をした。前進だけでなく後ろ向きに走ったり、左右の車輪の回転を両手で調整しながらコーンの周りをカーブする技術など、相当なテクニックがいることを生徒たちは体感していた。

同クラブは京都府内の小中高校でこうした紹介授業を年間延べ数十回開いている。生徒からは「車いすは案外うまく乗れた。競技のことが分かった」と競技そのものへの反応のほか、「競技用車いすの操作は難しい。上手に使っていてすごい」「ハンディがあるのに頑張って練習してるんだなあ」など、障害のある人と接してのフランクな感想も多いという。

同高でも毎年、3年生を対象に福祉教育の一環として実施しており、これをきっかけに障害者スポーツに関心を持ち、その道に就職したり、ボランティアに関わる人もいる。「キャリア教育にもなっています」と担当教員の加地尚樹さん(49)は話していた。

京都アップス
1988年に活動をスタート。メンバーは10代から70代の15人。練習日は毎週金曜日夜や第2・4土曜日、京都市南区の市障害者教養文化・体育会館で。連絡先は山本さん090(5889)4803