2023.07.11
2023.07.11
生活介護事業所「すずしろ」の週イチカフェ
春秋の観光シーズンはもちろん一年中大勢の入洛客でにぎわう京都市西京区の阪急嵐山駅のすぐそば、緑豊かな住宅地の一角をのどかに流れる用水路のほとりで毎週金曜日の昼間、そのカフェは営業している。
水路に架けた石の小橋の上にカレーやハンバーグのランチセット、ベーグルやケーキにコーヒー、ジュースなどのメニューを記した看板を設置。小橋を渡った正面の建物内には木組みを生かしたゆったりした空間が広がり、木質を強調したインテリアの室内は大きな窓から取り入れた明るい日差しがまぶしいほどだ。
ここは、社会福祉法人「なづな学園」(京都市東山区)が運営する生活介護事業所「すずしろ」のレクリエーションスペース(120平方)。そこを活用して同じ法人の兄弟施設、多機能型事業所「かしの木学園」(中京区)がカフェを運営、その利用者6人が、町の人にも開かれた週イチカフェで働くというユニークな取り組みの場所だ。
「すずしろ」自体が、「かしの木学園」など知的障害のある利用者の高齢化と障害の重度化に対応し、支援する複合拠点として、食事や入浴や排せつ介護などを受けられる日中サービス支援型グループホーム「ホームあらしやま」と隣接・併設する珍しい形で一昨年、同法人がオープンした。
このスペースは、月曜から木曜の他の曜日は、「すずしろ」の利用者の生活介護の場であり、昼食をとる場でもある。
そのため、両施設の清掃やメンテナンスも「かしの木学園」の就労移行部門の利用者が担っている。金曜日のカフェで使っている食器類は、同学園で製作した陶器、提供するコーヒー豆も同学園で焙煎(ばいせん)したもの、パン類も同学園が製造販売している商品だ。カフェを担当している「かしの木学園」の支援員奥村拓也さん(38)は「両施設の機能を生かし、かつカフェも地域の方との交流も図る開かれた施設として運営しています」と活用の利点を話す。
言葉通り同施設は、地域に開かれた場としての運営を心掛けている。例えば、外部の専門家を招いてベビーマッサージなど子育て中の親子を支援する催しを開いたり、地域の体操(ヨガ)教室や町内の神輿(みこし)の披露場、地元の人らも手作り品で参加した市「マルシェ」の場として利用してもらったりもした。このマルシェでは「かしの木学園」で製造したパンも販売し、金曜日のカフェを地元の人にも利用してもらうきっかけづくりにと工夫も凝らす。さらに地蔵盆などの場所としても利用してもらえないかと考えている。
「かしの木学園」施設長の滝沢一人さん(58)は「両施設は、地元の人にもスタッフとして短時間でも働いてもらえる場としても役立てたい。金曜日だけのカフェは、その前後の食品管理の難しさなどがありますが、将来的には農作業なども取り入れて、野菜も自前で提供できるようになれば」とさらなる広がりを考えている。
「ホームあらしやま」と「すずしろ」は2021年にオープン、各定員20人。「かしの木学園」は1970年開設、2011年より「なづな学園」の設置運営に移行。就労継続支援B型、生活介護、就労移行などを交えた多機能型事業所。職員約20人、18歳から80代までの約60人が利用し、縫製や陶芸、紙器加工なども行っている。