ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

視覚障害者の自立貢献

2021.08.02

  • ふくしナウ

点字

京都ライトハウスが点字に興味をもってもらうために作成したチラシ

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

 パラリンピックの各メダルの表面に、「TOKYO2020」の文字が、点字でも書かれていることをご存じですか。

 点字は、視覚障害者を支える大切な「文字」で、自身で読むことも書くこともできる優れた「文字」です。縦3個、横2個で合計6個の凸点の組み合わせで表現し、読み取りは指先の触覚を使います。この6点を1マスと呼び、平仮名や読点などは1マスで、濁音や数字、アルファベットなどは複数マスを使います。

 点字は表音文字で、平仮名が長く続くようになるため、適宜、空白のマスをあけて判断しやすいよう工夫します。また、パソコンと専用ソフトで作成し専用印刷機で印字する場合などがあります。最近は修正やコピー、送信、収集などの作業が格段に容易なパソコン点訳が主流です。

 点字は視覚障害者の暮らしを包みこみ、読書や勉強などの自己発展、意思疎通の手段として用いられています。ビール缶などの容器、電化製品のスイッチ、行政からの郵便物、公共施設の案内板や、駅の券売機などに使われて、行動範囲を広げています。さらには、選挙での点字投票、資格取得や大学進学、公務員試験のための点字受験など、視覚障害者の市民権・人権を確立させる不可欠の文字となっています。

 全ての人が点字をすぐに読めるわけではなく、一定の訓練、学習が必要です。厚生労働省の調査では、点字が利用できる人は障害者手帳の1級保持者で25%にとどまっています。理由の一つは、高齢で視覚障害になる人の割合が高く、指先の感覚が鈍り触読になじめないので音声図書で対応される方が多いためです。若年層を母数にすると識字率は上りますが、こういった層に適した訓練内容やテキストの改良、開発に取り組んでいくことも肝要です。

 京都ライトハウス(京都市北区)の情報ステーション(点字図書館)で点字を読まれる人は500人強おられ、2019年度は点字図書の貸出数が増加するなど活発な様相を見せています。ボランティアも500人ほどが登録されています。点訳サークルは、自治体ごとに地域の仲間で活動、ライトハウスを拠点として活動、各大学の点訳サークルなど数多く活躍されています。

 今後の点訳の課題は、誤植がないか、文法に適合しているかなどの正確性、提供の即時性、学問書などの内容を把握できる専門性、暮らしに身近な簡便性などをより一層高めることです。

 京都ライトハウスでは、点字を記載するユニバーサルデザイン型図書の作成などに取り組んでいます。これからも視覚障害者のニーズに沿った「点字」の充実に一層励んで参ります。

(京都ライトハウス障害支援部部長 山本たろ)