2020.09.07
2020.09.07
京都ヘルパー連絡会代表世話人/櫻庭 葉子さん
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
身体介護や生活援助などの訪問介護を支えるホームヘルパー制度が、かつてない苦境に立たされています。ヘルパーのなり手が激減しているのです。
介護報酬は低いままに抑えられ、雇用形態は非正規雇用が大半。ヘルパー自身の高齢化も進み、ことしは新型コロナウイルス感染拡大の影響で休職や退職が増えたため、閉鎖する介護事業所も出てきました。
このままでは必要な支援介護が届かず、とくに独居の利用者さんが困窮する事態も予想されます。京都ヘルパー連絡会(京都市中京区)は、ヘルパーを中心に一般市民や研究者でつくる団体です。実態を知る立場から、行政に提案や注文を続ける一方、一般の関心を高め、危機克服への活動を強めています。
ヘルパーの社会的地位は低く、京都でも約20年前までは労災保険も労働組合もありませんでした。「独りぼっちのへルパーをなくそう」と、有志が立ち上り1997年から学習の場として始めたのが「ホームヘルパーのつどいin京都」です。
ヘルパーの待遇改善、利用者さんの権利保障などを数百人で議論する場となり、以来、毎秋に開催。2006年のつどいに参加した有志が集まり創立したのが、私たち連絡会です。
介護保険制度から20年。この間の制度改定では、掃除や料理、洗濯などヘルパーによる生活支援の重要性と専門性が軽視され、報酬単価の切り下げもありました。「生活支援は家事代行」とする偏見は行政にも根強く、私はヘルパー制度を危うくする要因の一つと考えています。
私がヘルパーの存在を知ったのは高校生のころ見たテレビ番組からです。要介護者は施設に入らずとも自宅で訪問介護を受けて暮らせると知って感激。大学に入るころ、ヘルパーの資格を取りその後、介護事業所に登録して現場を回りました。
先輩ヘルパーから教わったのは「制度から見るな、人を見よ」です。1対1で人と向き合う福祉の神髄ですね。利用者さんにも教えられました。私の訪問を拒み続ける認知症の女性に叱られたのです。「いきなり掃除はだめ。まず顔を合わせ相手を知ることから始めなさい」。記憶力は衰えても人間の尊厳を示す姿に襟を正しました。
こうした体験を糧に32歳で独立し、今はヘルパー事業所などを運営しています。ひきこもりの人を支援する国の事業に参加が認められたので、近く始動させ、その先は子ども食堂などの運営も構想中です。
仕事の間口を広げながらもヘルパー制度は私の中心課題です。人が老いて在宅のまま最期を迎えたい時、ヘルパーは最も頼れる存在。彼女、彼らが不安なく働ける環境づくりに、多くの人の理解と協力を望みます。
さくらば・ようこ
1975年、千葉県生まれ。京都市で学生時代にヘルパー登録。ケアマネジャーの資格取得後、独立して居宅介護支援の事業所「わをん」(中京区)を開設。ヘルパー派遣や障害福祉サービスも手がける。2015年から京都ヘルパー連絡会代表世話人に就いた。介護福祉士、主任介護支援専門員、相談支援専門員。