ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

3世代出展、継ぐ心/社会奉仕、願いこもる

2023.08.15

  • 京都新聞チャリティー美術作品展
  • 第41回
  • ともに生きる

第41回京都新聞チャリティー美術作品展

今井政之氏の遺作を手にする裕之氏(右)と自作を持つ眞正氏。後ろは、政之氏の遺影とサミット時に制作した花瓶

第41回京都新聞チャリティー美術作品展(京都新聞社会福祉事業団・京都新聞主催)が16日から京都市下京区の京都高島屋で開かれる。美術作家や宗教家らの協力で1983年から続いている。今回も約900人から陶芸、工芸、彫刻、洋画、版画、日本画、書など千点を超す寄贈があった。

書を前に思いを語る杭迫柏寿氏

第1回から善意を届ける作家も多い。その一人、文化勲章受章の陶芸家今井政之氏は、今年3月に92歳で死去。しかし長男眞正(まきまさ)氏(62)、次男裕之氏(58)=いずれも山科区=、孫の完眞(さだまさ)氏=右京区=の厚意で遺作「備前象嵌海老瓶子(びぜんぞうがんえびへいし)」も含め、3世代の作品が出展される。遺作は生命や自然を表現してきた政之氏らしく、面象嵌の技法で繊細で鮮やかにエビを写す。「長寿の象徴でもあり、脱皮して成長していく意もこもっているのでは」と眞正氏。政之氏は今年の広島サミットで各国首脳に贈られた花瓶を制作した。それに似た瓶子について兄弟は「父はオバマ大統領の広島訪問に感激し、オバマ氏に作品を贈ったほど平和への願いは強かった。父の思いをチャリティーにと考え、その思いを持って」と口をそろえる。

生物を題材に彫刻で培った造形力を生かす眞正氏の陶器は「白花文六足花瓶」。「父の死去ということもあり白い花にした。可憐(かれん)に咲いた花をモチーフにカニのイメージも重ね、動くようなものを表現してみた」と解説する。金石造形の裕之氏の「Play of color confeito」は、水晶が素材の文鎮を白金で彩色。「地球の作った素材を造形する思いで制作している。父も土という地球からの贈り物を造形していたので、思いは重なる」と話す。完眞氏は、陶作品「木目碗(わん)」を寄せた。

浜田泰介氏の「初秋石鎚と月」

同じく連続出品する書家の杭迫柏樹(くいせこはくじゅ)氏(89)=伏見区=の作は、鋭く清冽な筆遣いで調和体の「志を果たして」。「静岡県の森町から京都の大学に書道の勉強を志して来ました。緑の山を背負い町を清流が貫き、遠州の小京都と呼ばれています。この歳までに日本芸術院賞などを頂き、昨年には森町の名誉町民第1号にも。最近はこの詩文も書くようになりました」と語る。チャリティーについて「職業を通じて社会奉仕するのが願い。大変やりがいを感じている。書を通して役立てることがあれば、なんでもやりたい」とも。

日本画家の重鎮、浜田泰介氏(91)=大津市=も初回からの常連。作品「初秋石鎚と月」は、星空と満月を後景にススキの穂を配し、月光を映した霧に浮かぶ群青色の山並みが印象的。「石鎚は帰省の折に車窓から必ず見ていた故郷の山。米国在住時にチャリティーの意義と楽しさを経験し、チャリティーだからこそ良い作品を出そうとの思いは強い。自分にとっては生きてる証という意味も」と磊落(らいらく)に破顔した。

21日まで。無料。