ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

困った時の支援の入り口に/若者に近い場をつくる(20/10/14)

2020.10.14

  • わたしの現場

竹久 (たけひさ)輝顕(てるあき) さん

ロビーで若者たちと会話を交わす竹久輝顕さん(中央)=1日、京都市中京区・市中央青少年活動センター

 午後5時を過ぎた頃、京都市中央青少年活動センター(中京区)に続々と若者が集まってくる。ロビーで参考書を広げて自習する中高生や、別室で野外活動の計画を話し合う大学生たち。そんな若者らの活動を見守るのが、所長でユースワーカーの竹久輝顕さん(42)だ。時折ロビーに顔を出し、利用者に声をかける。

 「ユースワーカーって、何をする人なのかわかってもらいにくい。若者の立場で考えて関わり、学校や家庭の話を聞いたり、個人の成長を助けたりする仕事で、実は福祉を必要とする人とつながるための入り口にもなるのです」

 若者の活動拠点や居場所を提供し、地域のニーズに合わせて事業を展開する青少年活動センターは、京都市内7カ所。毎年計約50万人が利用する。竹久さんは、市内のセンターや子ども・若者支援の現場を経て、宮城県石巻市で子ども・若者総合相談センターの立ち上げにも携わり、今年7月から現職に就いて各センターの統括的役割も担っている。

 困りごとを抱えた若年の支援をしてきた経験から、「支援の入り口はたくさんあった方がいい」と考えている。「実は困っている」若者はたくさんいる実感があるが、支援を掲げる窓口に行く方が気楽な人もいれば、「支援する人・される人」の関係ではうまく心を開けない人もいる。「困っている人を一対一で支える個別支援だけで社会に踏み出せない人にとっては、若者同士や立場の近い人との関わりが大きな意味を持つ。ひきこもり支援の次はすぐに就労支援、ではなく、『その間』の役割が大事」

 若者に携わる中で力を入れているのは、個別相談とは違う、立場の近い人たちとの「場づくり」をどう進めていくか。同じような悩みを持つ人と関わることで元気になる若者を日々目の当たりにし、「場の持つ力」の大きさを実感しているからだ。「場づくりは、青少年活動センターの中だけでなく、地域でも、どこでもできる」。若者が参加できる場を作ってもらい、そこにユースワーカーが関わっていく形も広げようと模索する。

 普段から若者のそばにいるユースワーカーは、「支援者」という立場とは異なる関係性を築くことができる仕事だ。だが、常に若者のそばにいても、アンテナを立てていなければSOSを見過ごしてしまうこともある。「スタッフへの表面上の言葉は本心じゃないことも多いため、その裏にどんな思いがあるのかを見ることが大事」。本当に困った時に打ち明けようと思ってくれて話ができるように、普段からの関係性を重視する。

 ユースワーカーの仕事は、理解されづらいことに加え、数字などのわかりやすい結果がすぐに出ない点も難しい。関わった若者が、何年もたってから「あの時かけてもらった言葉に、今すごく感謝しています」とお礼に訪れてくれることもある。「経験したことが本人の中で生きてくるのは、本人のタイミングでしかない。その時は何も生まれていないように見えても、必ず糧になっているのです」

 信じているのは、「プロセスの力」。ゴールではなく、目の前の若者の成長を見つめる日々だ。