2025.02.03
2025.02.03
44年、仲間・その家族の導き
「人の成長や発達に携る仕事がしたい」。私が「はるの里」に関わる出発点は、そこからです。大学を卒業したての1981年春、縁あって京都第一共同作業所「はるの里教室」(京都市下京区)で働き始めました。
養護学校卒業生が次の行き場に困窮した時代、親御さんや先生らがやっとの思いで用意した居場所でした。間借りした長屋で、仲間(利用者)2人と私の3人でスタートしたのです。
44年後のいま、小さな作業所は社会福祉法人が運営する生活介護事業所はるの里に発展。通算で約40年をはるの里に携った私は65歳を区切りに所長職を交代した後も、引き続き現場に関わっています。
振り返ると人生で大事な多くのことは、障害のある仲間たちと家族のみなさんに教わったと気づきます。ここまで導いてくださり感謝以外にありません。
西京区に移転、新築した現在のはるの里には、19~69歳まで19人(定員20)の仲間が通っています。「社会の主人公として豊かに生きる」を基本理念に、やりたいこと、好きなことは自分たちで話し合って決めるのが原則です。空き缶つぶしや、裂き織りの自主製品作りなど、工賃につながる作業もそれぞれの力に応じ緩やかに楽しく取り組んでいます。

2009年、生活介護事業所への移行を決めた際も、まず仲間たちの思いを確かめました。「作業時間を増やしてお給料を増やすのはどう」の問いに、仲間たちの結論は「これまで通りゆったり自由に」でした。
過去にピンチは幾度もありましたが、私たちの最大の強みは、地域をはじめ多くの方々に支えられていること。現在地に移転した14年、自治会はじめ住民のみなさんには温かく迎え入れていただきました。
バザーへの出品協力などを通じ、多数の住民のみなさんや、高校生ボランティアたちとつながっているのは、お金には替えがたい私たちの財産です。
仲間たちと家族の高齢化が進む中、緊急の課題は「仲間一人一人の今後の暮らしをどう支えるか」です。本人や家族が願う暮らしを、自由に選べるためにはどんな制度が必要か、何から始めるか、プロジェクトチームで見学や学習を進めています。
福祉現場の人材不足は深刻ですが、「はるの里」は20代前半から人生のベテランまでのすてきな職員集団に恵まれました。私もラストランは「チームはるの里」の一員として、だれもが安心して暮らせる社会づくりに微力を尽くすつもりです。
むらい・ふみえ
1958年、静岡県生まれ。22歳で、生活介護事業所「はるの里」の前身となる無認可共同作業所に勤務。5年のブランクを経て88年、再び作業所に戻り法人化を果たした2001年、所長と法人理事に就く。24年7月から副所長に。きょうされん京都支部副支部長。向日市在住。