2025.02.17
2025.02.17
「農福連携」多彩に着実に
カフェや加工品販売で交流へ
京都市西京区大原野に所在する福祉施設「第3乙訓ひまわり園 草のたね」は、5年前から、福祉分野で農業の有効活用を目指す農福連携事業を始め、取り組みを着々と拡大している。
同園では、約20人の利用者(メンバー)が、パンジーや葉ボタンなど季節ごとの花類を温度管理した農業ハウスで栽培し出荷している。春から秋にかけてはブルーベリー、冬から春にかけては7品種のイチゴをハウス栽培し、青果市場に出荷したり、ハウスでのイチゴ狩りも行っている。さらに収穫したものを自分たちの手でイチゴソースなどに加工し、食品として販売している。今年からは観葉植物を人工土壌で育てるハイドロカルチャー作りのワークショップと販売も計画している。
イチゴ類の作業は、秋の土づくりから始め、奥行き50㍍の大きなハウス2棟で4800株の液肥を循環させて水耕栽培。最高24度まで適当な温度に管理しながら丁寧に育てている。ハウスで働いているメンバーらは「一株一株の成長具合を自分で確かめながらやれるのが面白い」「種から植えて出荷まで経験できるのがやりがい」「花の栽培は自然相手に働けるので、心いやされる。イチゴに砂糖やレモン汁を加えて自然食品を手作りできるのも面白い」と口々に話す。
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谷口徹也施設長(53)は「農業はいろんな作業があるので、障害の程度に応じて働いてもらいやすい」と農福連携事業のメリットをあげ、「夏場は暑いハウスの中での作業で、保冷対策にはおおいに気を使ってます」と笑う。農家を経験し実際に農業指導する事業管理者の東田勝幸さん(55)は「農福事業を継続していくには、第1次産業的な部分だけでは収益的に難しいところもある。販売事業も含めて収益をあげていくことを考えていく必要があるでしょう」と付け加えた。
谷口施設長は「農業は365日続けねばならないので、人手・人材の確保と農業技術の継承が大切。その点も配慮していく必要がある」と課題にあげた。そうした点から、府立農業大学校を卒業した青山聡子さん(23)が、昨年から農業指導員として現場で汗を流している。青山さんは「勉強してきた農業技術しか知らなかったので、農福連携事業ということには戸惑いもあったけれど、ここで働き始めて、メンバーさんとの距離感がつかめてきたり、段々わかってきたこともある」と初々しく話す。
さらに今春にはカフェや販売スペース、調理もできる農産物の加工品や試作品の開発室も備え、寄せ植え体験もできる地域交流施設「さんテラス大原野」を開設する。東田さんは「これまで消費者と接する機会が少なかったのでサンテラス大原野のオープンは役立つ。今後も何年もかけて投資的な要素を考えながらやっていきたい」と抱負を語る。
これまでも年に数回、農作物や加工食品などを販売する「草のたねマルシェ」を開いており、3月20日には年1回の「第3ひまわりフェスタ」を予定している。
(ライター山本雅章)
第3乙訓ひまわり園 草のたね
向日市の社会福祉法人「向陵会」(1999年設立)が運営。2017年に開設し生活介護、就労継続支援A型とB型事業を行っている。基本理念は地域と「共生」する施設。農福連携事業には職員約10人と知的障害などの利用者約20人が取り組んでいる。京都市西京区大原野上羽町、075(335)0222