2025.03.24
2025.03.24
児童養護施設「京都聖嬰会」 保育士/北川陽菜(きたがわ・ひな)さん(23)
京都市北区の児童養護施設「京都聖嬰(せいえい)会」。ここで働く北川陽菜さん(23)は、入職1年目の職員だ。事情があって親と暮らせない女子中高生らを担当し、毎日の生活を支える。「年齢が近いので、お姉さん感覚でTikTokやダンス、若者の間ではやっている食べ物の話、恋愛の話もします。相談をしてくれるし、慕ってくれてとてもかわいいです」
児童養護施設での仕事に関心をもったのは、中学1年のときだ。子どもが好きで、保育士になりたいと思っていたが、施設の子どもを描いたテレビドラマを見て「こんな世界があるのかと知った」。そこから、親と暮らせない子どもを支えたいと思うようになり、自分なりにたくさん調べた。高校でも気持ちは変わらず、大学で福祉を専攻。京都市内の施設でアルバイトを続けた。
京都聖嬰会との出合いは、大学教員の紹介で見学したのがきっかけだ。職員をあだ名で呼び、大人も子どもも垣根のない雰囲気や職員らの人柄にひかれた。「幅広い年齢の人がいて気軽に相談できそうだった」。子どもたちがのびのび過ごしている様子も見えた。
昨年春に入職。現在は5年目の先輩とペアを組み、中高生が暮らす地域小規模児童養護施設で子どもたちをサポートする。

仕事で難しいと感じるのは、複雑な事情を抱えて傷ついてきた子たちとの向き合い方だ。愛着の問題から「自分を見てほしい」気持ちが大きすぎたり、家に帰れない事実を受け入れられなかったり。大人に裏切られてきた子もいる。「親にはなれないけれど、根気強く『大切に思っているよ』と伝えて、自立までの短い期間にできる限りの愛情を注いでいます」
話し合いがこじれてしまっても、将来のためにわかってほしいことをきちんと伝えることをあきらめない。子どもが安定していい状態で話せるときを逃さないように心がけ、今話すか、今度にするか、タイミングまで相談する。
1年がたち、気持ちが不安定で毎晩のように泣いていた子どもの様子が変わってきた。「『どんな時も逃げずに向き合ってきたからやね』って先輩に言ってもらい、うれしかった。自分では、ただただその子がかわいくて、愛情を注ぎ続けただけなんですけどね」
今頑張っているのは、「言葉で伝える」こと。「私自身、言葉での表現が苦手。でも、同じように苦手な子どもたちの見本になりたい」。観察力にたけ、わかりやすく言語化できる先輩たちが目標だ。
児童養護施設の仕事は、しんどいこと以上にやりがいがあると感じる日々だ。「子どもたちを思って働く心優しい人たちに出会えるのも、大きな魅力です」
(フリーライター・小坂綾子)
京都聖嬰会
社会福祉法人カトリック京都司教会カリタス会が運営する児童養護施設。1877年、フランスからの修道女が身寄りのない女児たちを支援し、1886年に前身となる女子教育院を創立したのが始まり。キリスト教の教えに根ざし、一人ひとりを大切にする。本館のほか地域小規模児童養護施設があり、定員は50人。075(462)9268