ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

理解広めドナー確保へ

2025.03.31

  • わたしの現場

片岡 智一(かたおか・ともかず)さん

骨髄バンク普及を目指す(25/03/31)

 「滋賀骨髄献血の和を広げる会」は、公益財団法人「日本骨髄バンク」が進める骨髄移植へのドナー(提供希望者)登録の普及のために滋賀県内で活動している。発足から約30年、全国規模のNPO法人に加わり、80人ほどの会員がいる。片岡智一会長(52)は30年近く前にドナー登録したのをきっかけに会に参加し、骨髄バンクへの理解を広げたいとボランティアを続けている。


 骨髄移植は、白血病や血液疾患などへの治療法の一つとして確立し、骨の中にある骨髄液を健康な人から患者に移植し治癒を目指す。ただHLAという白血球の型が合わないと移植できない。適合は兄弟間で4分の1、血縁関係がない人同士なら数百~数万分の1という確率になるため、あらかじめ健康な人が骨髄バンクに登録し、移植を求める患者とマッチングする仕組みとなっている。


 ドナー登録は一部の保健所や献血ルームなどで可能で、内容を理解して申込用紙に記入し、医師の問診や2㍉㍑ほどの採血で完了する。18~54歳が登録でき、日本では約55万人が登録している。登録者は40代以上が多く、毎年2万5千人以上が年齢超過で抹消となり、新規ドナーの確保が必要だ。

ボランティアとして各種の連絡調整作業も忙しい片岡智一会長(6日、甲賀市)

 全国では毎年約2千人の患者が適合するドナーの出現を待っている。ドナー側では、提供に際して事前の検査や面談、健康診断、自己血採血なども含め何度も仕事を休まないといけない場合も多い。また、家族の反対にあうケースなど、さまざまな理由から希望している患者の半分程度しか移植を受けられない状況にある。ドナー登録会の開催は、安定した数の登録者を確保し、患者の生命を救うことにもつながる大きな役割を果たしている。


 同会は、公共施設や大学、企業など県内各地で年間170回ほど開かれる献血会の献血バスそばでドナー登録をすすめる活動をする。また各地の健康祭りやマラソン大会などのイベント会場でブースを設けてパネル展示をしたり横断幕やのぼり旗を立ててチラシを配ったりの啓発活動も展開。さらに学校や企業で、元患者や元ドナーなど実際に経験した人や家族が話す「語りべ講演会」も開いている。


 ドナー登録する人は県内でも増えているが、地域的や年齢などまだ偏りもある。会としては日本骨髄バンクの「認定説明員」として活発に活動できる若い会員を増やしていくのも課題だ。ボランティアなので経済的にも時間的にも負担がかかる同会への社会的認知も進んでいない。甲賀市に住む片岡さん自身、家族を抱える会社員だが、「休日はもちろん自由の利く時間はほとんどつぎ込む」ほど忙しく、「行政の委託事業的にでもなればいいのですが」と願う。

 同会は、ドナー個人やドナーの勤務先に助成金を支給する支援事業も広げており、2023年度からは滋賀県内全市町で助成制度が確立できた。さらに企業でのドナー休暇制度の拡充も目指している。片岡さんは「今後は患者会などとも連携して、患者本人や家族への寄り添い活動や相談会など、患者さん支援の輪を広げていきたい」との抱負も抱いている。