ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

自分に合った関わり方を/社会とつながる場 提供(2025/04/28)

2025.04.28

  • 広がる 地域の輪

若者自立支援ボランティア居場所の会「レリーフ」

 社会とつながりにくい若者たちに「家から一歩外に出てほしい」との思いで、若者の自立支援に取り組む守山市のボランティアグループ『レリーフ』。農園での作業や調理実習、室内での内職作業など体験の機会をつくり、社会とつながる場を提供する。「家から出られない青年や家族にとって、居場所活動は命をつなぐ大事な取り組み。若者が安心して過ごせるよう、さまざまな工夫をしています」と代表の大道生枝さん(74)。
 同園では、約20人の利用者(メンバー)が、パンジーや葉ボタンなど季節ごとの花類を温度管理した農業ハウスで栽培し出荷している。春から秋にかけてはブルーベリー、冬から春にかけては7品種のイチゴをハウス栽培し、青果市場に出荷したり、ハウスでのイチゴ狩りも行っている。さらに収穫したものを自分たちの手でイチゴソースなどに加工し、食品として販売している。今年からは観葉植物を人工土壌で育てるハイドロカルチャー作りのワークショップと販売も計画している。

 社会とつながりにくい若者の親たちの、「わが子の人生を少しでも豊かに」という思いから始まった。講習会に参加していた親たちが、2016年、守山市社会福祉協議会の登録ボランティアグループとして立ち上げた。

活動拠点で内職に取り組むメンバーたち(守山市下之郷)


 活動のテーマは、「いろいろな不安はあるだろうけれど、まずは手を動かそう」ということ。農園を無償で提供してくれる人の協力で、農作業に挑戦。里芋やタマネギ、グリーンピースなどを栽培し、苗植えから収穫までの工程に取り組んでいる。
 3年前から、同市社会福祉協議会の地域福祉活動センターに拠点を設け、調理実習や内職を開始。社会に出るために必要なさまざまな力を身につけている。
 取り組みは、農作業や内職だけではない。リトリートキャンプや水族館ツアー、外食会、企業見学などの活動もある。「イベントだけは参加する、という人もおられ、遊びの要素も大事にしています。多様な機会をつくることで、自分に合った関わり方を選んでもらえる」と事務局長の奧村真幸さん(78)。
 5家族で始まった活動だが、現在、メンバーは33家族にまで増え、世話人は8人に。活動を通して、人とのコミュニケーションや品質管理の経験、就労体験などを重ね、いずれは自分の力で就職できるようになることを目指す。
 若者の自立支援が柱だが、5年前から親の会の活動も始めている。「居場所活動をしていると、親はどうすればいいのかわからなくて、相談される。けれど、相談されても私もわからない」と大道さん。そこで、親自身が学ぶ機会をつくることにした。「親が悩んだ時に、話せる人がいて、『自分だけじゃない』と思えることはとても大事なこと」。悩みを共有し、「こうすると良かったよ」というアイデアを語り合い、研修会にも参加する。
 さらに、本人や親に向けた「レリーフ相談室」も始めた。精神保健福祉士と日本カウンセリング学会公認カウンセラーの2人が、相談員を務めている。「プロに話を聞いてもらうことで頑張れる。自分の中で『こうしたい』と思うことがあって、『それでいいよ』と言ってもらうと安心する。そういう人も多いようだ」と奧村さん。
 今後は、家庭にいる主婦やお年寄りらにも対象を広げ、幅広い人と一緒に内職などの活動をする構想もある。そのためにも力を入れていきたいことは、後継者の育成、と啓発活動、そして活動資金の確保だ。「活動の意義を知ってもらい、レリーフが在り続けられるように頑張りたい」と大道さん。人とつながる機会をこれからも提供すべく、活動を広げていく。

(フリーライター・小坂綾子)


若者自立支援ボランティアGroup居場所の会「レリーフ」

2016年に、引きこもりの若者たちの自立を支えるために結成。農園の作業から始め、守山市に拠点を設けて内職や調理実習にも取り組む。家族の会や女子会の開催のほか、「レリーフ相談室」も開設し、若者や家族に伴走する。守山市下之郷、守山市社会福祉協議会内。連絡先は077(583)2923