ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

したいこと実現し、自立へ

2025.06.02

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障害ある人を支援、NPO法人「無門社」理事長 駒井 せつさん

 障害のある人たちが、それぞれ自分に合った仕事を開拓して、共に働くことを通じ自立を目ざす。それが私たち無門社の基本理念です。利用者さんはメンバーさんと呼ばれ、職員たちも「同じ働く仲間」としての視点を持ちながら、自立を支援します。

 活動の出発点は1994年に京都市下京区内で発足した共同作業所「協働ホーム」でした。2001年、法人化を遂げた後は、就労継続支援B型事業所「協働ホーム」に衣替え。本拠を「ひと・まち交流館京都」(下京区)近くにある現在地に移した今は、メンバーさん42人、職員29人の体制で日々の仕事に取り組んでいます。

 私は、共同作業所時代の協働ホームで運営委員を務めた縁もあって、法人化の前年に職員となり施設長などを経て7年前に法人理事長に推されました。重視しているのは、メンバーさんたちの働く力を引き出してあげること。障害の有無に関係なく、人は自分の体を動かして働き、それで生きていくことこそ、最も大事だと思うからです。

法人総会の準備で、小槇博美副理事長と話し合う駒井せつ理事長=右(京都市下京区のNPO法人「無門社」本部事務局)

 無門社の事業はB型事業所の仕事と、配食サービスの2本立てです。B型事業所には、区役所や支援学校などの清掃をはじめ、お菓子の製造販売、喫茶店の運営、調理、配食、手芸…と多様な仕事があります。配食サービスは、市社協の委託事業。東山区で借り上げている京町家「浅川亭」を拠点に、ここの厨房(ちゅうぼう)でお弁当を作り、地元と下京、南区内の高齢者宅へ安否確認を兼ねて届けています。

 法人本部1階では、誰でも利用できる「きんぎょ食堂」も運営。ここも合わせ、メンバーさんの働く現場は計16に及び、意向や経験、適性などに合わせて選ぶことが可能です。B型事業所として支払う工賃は、昨年度1人月額平均約4万4千円と高い水準を維持しました。

 私が障害者福祉の道に進むきっかけは、高校時代に先生に連れられ、泊まりがけで施設ボランティアに出かけた経験だったと感じます。「福祉の仕事に関われたら」と思い、障害のある人と接する機会を増やしていくうち、今にたどり着きました。

 周りに流されず、自分が思ったこと、したいことを実現する主義を貫いてきましたので、無門社のメンバーさんにも、したいと思うことを実現させる環境を、ぜひ整えてあげたいのです。同時に「これがしたい」と自由に意思表示できる環境も用意する。無門社はそんな集団でありたいと考えています。

 平均年齢48歳と、メンバーさんの高齢化が進む中で迫られているのは生活支援の充実。より幅広いサービス提供へ、B型事業所から多機能型事業所への転換も模索しながら、手狭になった本部建物の改築計画にも着手していくつもりです。

こまい・せつ

1949年、京都市生まれ。高校時代から障害者支援のボランティアを経験。保育園保母などを経て京都市内の授産施設に指導員として勤務。2000年、下京区の共同作業所「協働ホーム」に移る。法人化により「無門社」発足後は施設長を経て18年から法人理事長。京都市在住。