ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

子たちと一緒に自分も成長

2025.06.10

  • 若葉

児童養護施設迦陵園 ケアワーカー/松久保聖矢(まつくぼ・せいや)さん(23)

 家庭生活で困難を抱える子どもたちを守り育成する児童養護施設「迦陵(かりょう)園」(京都市左京区)。ここで働く松久保聖矢さん(23)は、入職2年目のケアワーカーだ。「子どもたちの成長が実感できて、その子のパーソナリティーがつくられていく過程に寄り添える。思春期の子の悩みを聞いたり、スポーツやイベントを楽しんだりして、自分も一緒に成長しています」

 同園は大舎制で、小中学生や高校生らが男女各フロアに分かれて暮らしている。「イベントも多く、男女年齢差関係なく混ざり合い、職員同士も子どもたちも仲がいい点が気に入っています」と松久保さん。活発で話し好きな子どもが多く、職員も若くて活気があり、離職率も低いのが特徴だ。

 子どもに関わる仕事に関心をもったのは、中学生の頃だ。保育士を目指し、大学で保育を学ぶ中で、児童養護施設職員の仕事を知った。保育士や幼稚園教諭に比べて一緒に過ごす時間が長く、子どもの成長の基盤を支える仕事だと知って興味がわいた。大学時代にアルバイトとして子どもたちと関わる中で楽しいと感じ、入職を決めた。

「将来、退所した子が会いに来てくれればうれしいですね」と語る松久保聖矢さん(京都市左京区)

 1年目は、先輩職員と一緒に動き、教わりながら仕事を覚えていった。子どもの生活の流れを知り、子どもと関わる楽しさを知って、関係づくりに努めた。2年目に入り、保護者と会ったり、1人で業務をしたりすることも増えてきた。「職員は応用力も必要で、時間をかけて成長していく仕事なのかなと感じる。しんどいこともあるけれど、それ以上に楽しいことがたくさんあります」

 女性の多い職場だが、年頃の男の子が相談しやすかったり、スキンシップを求めてくる男児たちとも自然に関われたり、男性職員ならではのメリットもある。特に大事にしているのは、「甘え方を知ってもらう」ことだ。嫌なこと、やりたいことなど自分の気持ちを素直に出せない子や、甘えるのが苦手な子、甘えの限度がわからない子など、課題はさまざまだ。必要に応じて個別の時間を取ったり、自らスキンシップをすることで甘えやすい環境を作ったり、甘えたい気持ちが出てきたら受け止めたりしている。「厳格なルールやマニュアルはないので、セラピストさんたちとも情報共有しながら、日々みんなで考えています」

 最近は、「またね」「明日ね」という言葉をかけるように心がけている。「施設では、勤務によって一緒に過ごす職員が異なる。それって、子どもにすればきっとしんどいし、不安もあるはず。この人は明日もいる、これから先も見てくれる、という安心感をもってもらいたくて」。自分だったら聞きたいな、と思う言葉を伝えている。

 今後の目標は、毎日子どもが安心して頼りたいと思えるような職員になることだ。「ただ成長を見守るだけではなく、その子の思い出の中に自分がいて、一緒に関係性を育んでいける素晴らしい仕事。この仕事を選んだ自分を、『よくやったな』と思っています」


(フリーライター・小坂綾子)

迦陵園

社会福祉法人迦陵園が、京都市左京区の下鴨神社の近くで運営する児童養護施設。1952年、ろうあ児施設としてスタートし、59年に児童養護施設を設立。2015年には地域小規模児童養護施設「こがもの家」を設立。養育理念は、「子どもの心に寄り添い安全で安心な生活を保障する」。定員は40人。075(701)0250