ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

緊急時や転倒 制度外を柔軟に/生活を全てカバー(2025/06/16)

2025.06.16

  • 広がる 地域の輪

NPO法人「優人」

 城陽市の自宅を開放し、あえて福祉の諸制度の適用を受けずに、有料の自主的な福祉事業を展開するNPO法人「優人(ゆうと)」の理事長大川卓也さん(44)は、「福祉のよろずや」を自称している。

 主な事業は、通院や買い物、地域行事、墓参りなどに同行する「外出支援」と、自宅や病院、施設にスタッフが出向いて介護や家事援助などにあたる「訪問」。

 いずれも対象は高齢者や障害者などで、同居家族がいるなど制度の適用が難しいものの実際には必要としている支援を、原則登録会員制で時間単位の有料で引き受けている。大川さんは「かたちのある福祉制度は、人の生活を全てカバーできているものではありません。ぼくたちはそんな場合に備えて控えているといえます。また、同じ思いを持った事業者が少しずつですが増えています」と話す。「転倒救助や緊急時訪問など、『いま必要な支援』を柔軟に引き受けて、それを16年続けてきて、認知されてきたのかな」とも考えている。

 もう一つの柱は子ども対象の「集い場」事業。週2回の「こども食堂」と週1回の「居場所」活動。「居場所」は、主に小学生が放課後に訪れ、宿題をしたりくつろいだりしている。中学生でも、障害の有無などにかかわらず引き受けてもいる。

 「こども食堂」は無料で、夕方までに食事やおやつを提供する。ほかに月1回ほど、クリスマス会やもちつき、縁日など季節行事を地域の子どもらに開いている。

 「集い場」事業は、みんなで集まって、楽しい時間を過ごし、そうした時間を共有する大切さを知ってもらい、子どもの豊かな心をはぐくむのが狙いという。

城陽市の自宅で、子どもたちが集まり1月に開いた「集い場」事業の様子=提供写真

 発達障害の子や集団になじめない子らも、「優人」で楽しみ、居場所になることができる。そんな体験を経て「ひきこもりや虐待的な経験を持つ子が、その後、ボランティアとして訪ねてくれたりもしている」と大川さん。

 時には、生い立ちや家庭環境、社会環境などで「心を閉ざして、生きづらさを抱える」人たちの相談を受けたりすることもある。そこで大川さんやスタッフが精神保健福祉士や公認心理士の資格も取り、そうした人たちの相談や認知症、障害などで判断能力が劣ってきた人の「成年後見人」の仕事も始めている。

 ヘルパーの人手不足など、介護現場でも担い手不足が厳しくなっている時代。「今、助けてほしい、それも老若男女問わず」という声に応えようという強い思いが「優人」の原点。緊急避難としてのシェルターや、「摂食障害の相談支援事業者」支部に認定されたりもしている。

 福祉の自主事業だが、制度内で活動する人たちとの共存も望んでいる。「制度がないと生きられない人がおられるから。福祉活動という枠だけでなく、それを通して教育や環境に精通すること、自治や町おこし、地域の盛り上げもしていきたい」と大川さんは構想し、将来的には「看(み)取り」までできる場所づくりをと願っている。

NPO法人「優人」

2008年にNPO法人認可。城陽市平川鍛冶塚090(9619)2461。スタート当初は自宅で高齢者や障害者を預かるシェルター的役割を果たしていたが、「グループホーム」や「ショートステイ」など制度内の事業も整ってきた。「優人」では「訪問」や「外出支援」にシフトし、見学や事業内容問い合わせに詳しく応対している。