ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

思いやりの気持ち育む場に

2025.06.23

  • わたしの現場

藤井 梨恵(ふじい・りえ)さん

障がい者と子ども食堂運営(25/06/23)

 龍谷大大宮キャンパスそばの七条通りに面したカフェ(京都市下京区)を、毎週金曜夕方、子どもや保護者が訪れる。

 NPO法人クリエイター育成協会(同区)が2022年春から、常設の子ども食堂として運営している「Niji cafe(ニジカフェ)」だ。
 京都駅周辺では寺や空き家、公的施設などで子ども食堂は他にも催されているが、常設で開いている例は極めて珍しい。

 カウンター14席とテーブル4席の店内で、6月6日は小学生や保育園児など親子18人が煮込みハンバーグなどを無料で味わった。

 協会で担当理事を務める藤井梨恵さん(46)はスタッフやボランティアとともに準備し、参加者を迎えた。「障がいのある人たちといっしょにつくり上げています」と話す。

 運営母体の協会は、ITやウェブのプログラマーやデザイナーになるためのスキルを習得する就労移行支援事業や就労継続支援B型事業を展開している。

通りに面した掲示で子ども食堂のメニューを伝えているNiji cafeと担当理事の藤井梨恵さん(京都市下京区)

 店内には、B型事業所を利用する人が製作した缶バッジが並ぶ。通りに面して掲示された大きなホワイトボードには、毎週ごとに異なるメニューの内容を伝えるポップなタッチのイラストも手書きで描かれている。鮮やかな虹を円形に描いた店のシンボルマークも利用者が考えた。

 利用者が携わるのはイラストやデザイン面だけではない。

 実習として子ども食堂が開かれる前にも床を清掃し、野菜など食材の準備に加わる。ハロウィーンなど季節ごとの行事の飾り付けにも協力した。「それぞれが可能な範囲でさまざまな経験にトライしています」(藤井さん)

 自宅で十分に食事ができない、1人だけで食べる…そんな子たちがいつでも来られる居場所に、と子ども食堂を始め、回数を重ねてきた。藤井さんによると、今では子や親が楽しくわいわいと過ごす場のようになり、「Niji cafeが続くように」と利用する人が寄付をしてくれることもあるそうだ。

 今後の方向として、開催回数や提供する食事数、参加者数を増やすなど子ども食堂の事業だけで拡大をめざしているわけではない。藤井さんは「障がいのある人を支えるメインの事業について知ってもらうきっかけとなる場として、自然体で今のペースを続けていけばいい」と話す。

 事業所の利用者の中には、光がまぶしい、気圧の高低など周囲の人は気づかない微妙な環境変化が心身へ大きな影響をおよぼし、つらくなる人もいるそうだ。「当たり前のようにしてきたことが他の誰かにとってはそうでないこともあるということに、子どもたちが気づくきっかけになれば」

 「支援する側とされる側に垣根がない方がいい。障がいのあるなしにかかわらず、『お互いさま』という思いやりの気持ちをはぐくむ場所であってほしい」と藤井さんは願っている。

(秋元太一)