ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

手作りパンで市民とつながり/仕込みや接客 得意生かす(2025/06/30)

2025.06.30

  • 広がる 地域の輪

就労継続支援・生活介護事業所「ワークスおーい」

 亀岡市の社会福祉法人「松花苑」が同市大井町で運営する就労継続支援B型と生活介護の事業所「ワークスおーい」は、敷地の一角にベーカリーカフェ「ぱすてる」を開いて、多種類の焼きたてパンや焼き菓子類、ランチプレートも提供して市民に親しまれている。

 事業所全体では知的障害などのある利用者約55人が登録して通所。業務用の大型機械を駆使したクリーニング作業や、近くの農業用ビニールハウスでトマト、キュウリなど季節の野菜やレタスの水耕栽培、公園や公共施設の草刈りなどの作業を行っている。作った野菜は、地元スーパーや直売所での販売のほか、「ぱすてる」でサンドイッチに使うなどしている。

 「ぱすてる」での作業は主に女性の利用者10人と職員が担当。日曜以外の毎日朝からメロンパンやあんパン、カレードーナツ、サンドイッチ類など30~40種類のパンを個人店舗用程度のオーブンで焼き上げ、店舗での対面販売、レジ打ちも行っている。前日の午後にパン生地作りなど仕込み作業をし、昼には明るく広いガラス張りの店舗で、コーヒーやフライドポテトなどと組み合わせたランチプレートも提供している。

店舗からも見える作業場で働く利用者ら(亀岡市大井町)

 黒豆のガレット、抹茶クッキー、アーモンドチュイールなど焼き菓子類も製造し、午後の時間に自分たちで包装まで手がける。地域イベントや亀岡市役所などで定期的に販売したり、一般商店や宿泊施設のお土産物コーナーに置かせてもらったりもしている。

 約25年前の開所時から働いている利用者の山内菜月さんは「市販の冷凍生地を買ってオーブンで焼くところから始めた。レジ打ちやパン作りも難しいし、売るのにも苦労した」とスタート時の様子を振り返り、それでも「生地作りなどが上手にできた時には面白く感じる」と笑顔で話している。

 支援学校高等部卒業以来15年働いている長沢信之介さん(32)は、支援学校在学時から客として訪れており、パン屋さんになりたいと思っていた。生地作りやチーズを入れて成型するなどの作業が好きで、市内の学校や市役所での定期販売も面白く、接客やセールストークも得意という。

 「ぱすてる」担当のチーフ、支援員の小田真宏さん(45)は「パンはその時その時で状態が変わる『生き物』だと聞いていて、毎日の作業に気を使う。利用者さんの方が長くやっているベテランもいて、よく知っているので、教えてもらうこともある」と話す。

 事業所としても「利用者一人一人の希望と特性を生かして働けるように支援し、その人にあった働く場と役割づくり」を目指している。中村克子施設長は、「ぱすてる」は、地域の人たちとのつながりを深めるのに大いに役立っていると指摘、「お店に来て、パン作りの様子もガラス張りで見てもらえる。法人が運営する福祉施設のある場所に足を運んでもらう機会にもなっている」と理解している。

 また、社会貢献も兼ね、南丹高校や京都先端科学大学での「商品開発授業」に加わり、生徒や学生と協力してコラボ商品を企画したりもしている。

(ライター 山本雅章)

「ワークスおーい」

2001年、当時の知的障害者通所授産施設(定員30人)として開設。08年、法制度の変更などに対応して、新体系に移行し定員40人に増員。ルーツは1959年、前身となる社会福祉法人「信光会」が「亀岡松花苑」開設。66年に授産部開設。79年に社会福祉法人「松花苑」が施設・事業の設置経営の主体となる。0771(23)0703