2025.07.28
2025.07.28
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
立命館大名誉教授 津止 正敏
選挙の余韻に浸る間もなく目の前の課題に煩悶(はんもん)している。ケアとケアラーのコミュニティのこれからだ。
山科区介護者の会「はげましの会」が30周年の節目の今年、幕を下ろすこととなった。西京区の「虹の会」も30周年を迎えた昨年に会を閉じている。
1980年発足の「呆け老人をかかえる家族の会」を契機に、一つ二つと市町村の冠を付した介護者の会が生まれた。京都でも逸早く「宇治市介護者(家族)の会」が発足した(86年)。

集った介護者の声は徐々に社会に浸透し、介護負担への対策は政府や自治体の主要課題となっていった。もう家族は「福祉における含み資産」(78年厚生白書)ではなくなった。介護がようやく政治的争点に浮上し、在宅福祉を柱とする「ゴールドプラン(89年策定)」が政府肝いりの施策として登場してきた。
各地の先進的な保健所や社協が手がけてきた介護者の組織化活動は、地域福祉の「本業」となり、全国各地に会を誕生させる確かな動力となった。京都市の行政区でも虹の会(94年)やはげましの会(95年)、府下の長岡京市や城陽市にも介護者の会が生まれた(95年)。
その後、2000年に始まった介護保険制度は、介護者支援から本人支援にシフトチェンジした。組織化活動が「本業」だった地域福祉の守備範囲も随分と様変わりした。介護者の会も会員の高齢化が進み「会務が負担」「担い手がいない」の声が広がった。京都市の各区の会が幕を下ろすに至ったのはこうした大きな環境変化も影響した。
はげましの会の総会では、役員の苦労を思うと仕方ないが、寂しい。同じ立場の者同士の支え合い話し合いの場は残してほしい、との声も相次いだ。会務負担が運営を難しくしているのならその社会的分有の方途や支援の工夫はないのか、という問いでもあった。
始まったばかりの京都市ケアラー支援条例が受け止めるべき大事な課題のように思う。新たな「本業」セクターの創出にチャレンジしたいものだ。
つどめ・まさとしけ氏
1953年、鹿児島県生まれ。立命館大学教授。大学院社会学研究科修士課程修了。
京都市社会福祉協議会(地域福祉部長、ボランティア情報センター長)を経て、2001年から現職(立命館大産業社会学部教授)。2009年3月に「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」を発足させ、事務局長を務める。著書に『ケアメンを生きる-男性介護者100万人へのエール-』『男性介護者白書―家族介護者支援への提言-』、『ボランティアの臨床社会学―あいまいさに潜む「未来」-』、『子育てサークル共同のチカラ-当事者性と地域福祉の視点から-』など。