ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

点字、技術磨き理解拡大

2025.08.04

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向日市点訳サークル「きつつき」代表 宇山 晴美さん

 私たち「きつつき」の活動は今年で44年目に入りました。ボランティアとして向日市で、市社会福祉協議会の広報誌「福祉パレット」を点訳して視覚障害者へ届けたり、図書を点訳して点字図書館に納めています。

 視覚障害にかかわる啓発も大切な活動で、市内の小中学生に点字の基礎を学んでもらう授業への講師派遣は、長く続けてきました。

 点訳は、点字器と点筆を使い一字ずつ紙に打ち込む方法が長く使われました。私も初めは点字器で練習をしましたが、現在は点訳ソフトを使い、パソコンで作業できるようになりました。作った文書を点字プリンターにかけると、点字になって出てくるので非常に便利です。

 「きつつき」に入会すると、まずパソコンで点字の6点入力を練習します。点訳ソフトを使って文章を打てるようになると、少しずつ実践に参加。点訳作業は自宅で行い、その後の校正などはメンバーが随時集まって、何度もチェックします。点訳のルールは複雑で、パソコン入力は決して楽な作業ではありません

元サークル代表の辻村千草さんと、パソコン習熟の方法などについて話す宇山晴美代表(左)=向日市寺戸町、市福祉会館

 かつて30人を超えたサークル会員は、いま60代から80代までの男女15人。第2金曜日の勉強会と、第3金曜日の定例会に集まり、自宅で打った新聞記事などを点字印刷します。そして、指ではなく、目で見て点字を読む練習をするなど、常に技術の向上を図っています。

 私は、パート勤めが一段落した2014年、点訳ボランティアの募集を知って講習を受け、入会しました。実家は商売をしていたので子どものころから家業を手伝うのは当たり前。「困った人を助ける活動なら私もできるかな」と考え、始めたのです。

 サークルでの活動が長くなった私ですが、周りからは教えられることばかりです。視覚障害者で、サークル顧問の岡田多栄子さん(府視覚障害者協会代表)からは、当事者だけが知る悩みや課題を教わっています。点訳文のミスで注意を受けたり、点訳技術のアドバイスもしていただけるありがたい存在です。

 ここまで点訳を続けてきてよかった、と感じるのは自分が、視覚障害の方の気持ちに寄り添えるようになったこと。白杖(はくじょう)を手に、街や駅で困っておられる姿を見かけると、気軽に声をかけられるようになりました。

 当面の課題は、市社協とともに7月から始めた点訳ボランティア養成講座(全5回)の成功。講師を引き受けてもらっているサークルの前代表、北野節子さんの熱心さが報われるよう支援する一方、修了者に一人でも多く入会してもらえるように働きかけるつもりです。

 楽しいサークルを維持するには、会員の活躍の場を広げることも必要です。学校だけでなく、市民や事業所を対象に、出前講座が開けないか、可能性を探っていきます。

うやま・はるみ

1952年、京都市生まれ。市内の事業所でキーパンチャーとして勤務の後、結婚して向日市に。2014年、点訳サークル「きつつき」に入会。22年から代表。市内のお寺で定期開催する市民交流行事「マルシェ」にも参画する。向日市在住。