ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

自立向けたサポート追及

2025.10.06

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NPO法人ワークス共同作業所所長 大﨑 雅彦さん

 障害のある人が、親や家族にも依存せず真に自立した生活を送るため、社会人としての責任と役割を自覚しながら、ともに働き学び、助け合っていこう。ワークス共同作業所は、そんな理念で一致する利用者さんと職員たちで運営されています。

 始まりは1996年。当時、私がいた「日本自立生活センター」(JCIL・京都市南区)に、「仕事がない」「希望もない」といった相談が多く、「それなら自分たちで仕事を」と、私を含む6人の仲間が立ち上がったのです。京都市から「身体障害者共同作業所」の認可を受け、南区にプレハブ建物を確保。パソコンを使ったホームページや名刺作成の仕事を中心に、歩み出しました。

 発足30年目を迎えたいま、ワークスは生活介護と就労継続支援B型の事業所となり、20~90代の利用者さん38人が通っています。パソコン作業を仕事の中心に据え、名刺や電子データを制作。電子画面で描いたオリジナルの絵を元にカレンダーを制作・販売したり、ビーズで作るアクセサリー製品などのイベント販売も手がけています。

 私たちの組織は、任意団体のJCILを母体に、ワークスとNPO法人「自立支援事業所」が並立する三位一体の構成です。いずれも京都市南区に事業所を構え、JCILは自立生活実現のための運動や啓発、自立支援事業所は障害者対象の介護ヘルパー派遣に特化しています。

「働く一人ひとりの、個性と能力が尊重される事業所でありたい」と話す大﨑雅彦所長(京都市南区、ワークス共同作業所)

 幼少から車いす生活の私は、一般企業で働いていた20代後半からJCILにかかわり、路線バスの車いす電動リフト設置運動に取り組むうち、大きいチャンスをつかみました。1989年、リフト付きバスの先進地、米国への研修旅行に参加したのです。サンフランシスコなどで、実際に乗って快適さを実感。帰国後は、京都での実現に向け募金と街頭啓発に没頭しました。

 子どものころから車が大好きで、18歳の時に免許を取得。募金活動では、参加者を運ぶ車の運転も引き受けました。

 活動が実り、リフト付きの京都市バス2台が運行を始めたのは、91年12月でした。これを機に、京都市交通局の障害者にかかわる乗務員・職員研修は毎年、JCILの講師によって行われるようになっています。

 ワークスでは、当初から私が所長を務めていますが、ある分野の仕事を特定の人に偏って任せないよう注意しています。障害の種類や軽重で仕事からこぼれる人を出さないためです。

 自立へ向け、一人ひとりが個性と能力を発揮して、隔てなくやりたい仕事ができる態勢を整える。それにはどんなサポートが必要かを、追求しています。

 これからのワークスにとって大きい課題は、やはり後継職員の確保。若い力を集め、障害者の集う団体として社会へ向け「私たち抜きで決めないで」と声を上げ続けようと思います。

おおさき・まさひこ

1959年、京都市生まれ。呉竹養護学校卒。職業訓練校を経て企業勤務の後、日本自立生活センターでリフト付きバスの実現運動などに従事。96年、ワークス共同作業所設立に参加して所長に。2002年、NPO法人化を果たす。南区社協評議員などを歴任。京都市伏見区在住。