2025.10.21
2025.10.21
京都喉友会
「京都喉友(こうゆう)会」は、がんなどで喉頭を摘出し、声帯をなくした人が各種の発声法を訓練し、交流を深める患者団体だ。現在の会員は約90人だが、70年の活動歴があり、多い時には約300人が参加していた。会長で事務局活動も担う林田五郎さん(77)は「機能温存の医療技術や抗がん剤の発達で喉頭摘出を避けられたり、喫煙者の減が影響しているのかな」という。
喉頭摘出の後は、のどの下に肺につながる気管の孔を人工的に設ける。入浴時に気管孔に注意したり、水泳ができないなどの問題も生ずるが、最大の課題は「第二の音声を取り戻す」ことだ。その願いを実現するため、各種の発声法を訓練する。発声法には食道を使う発声、のどの部分にEL(電動式人工喉頭)を当てて声を出す方法、肺からの空気を口に送る人工弁シャントを手術で身体につける方法などがある。

食道発声は、器具を使わず話せ、習熟すれば抑揚をつけた自然な話し方ができる。ただ習熟に時間がかかり、声が小さく人混みなどでは聞き取りにくく、体力に依存するので高齢になると難しいなどの問題がある。EL発声では器具で音量調整ができ、身体への負担が少なく、息切れもしないなどメリットが多いが、声が平たんで感情表現がしにくく、機械音声の違和感が出るという問題がある。
シャント発声は肺の空気を使うので健常者に近い音量や発声持続時間が得られるが、手術が必要で、毎日器具の汚れをブラシ掃除で取り、数カ月ごとに病院で器具の交換が必要などの問題がある。三つの方法とも一長一短があるうえ、発声習熟に個人差があり、3カ月から1年、方法や人によれば10年近くかけて習熟することもある。
同会は京都市下京区の「ひと・まち交流館京都」と中京区の京都市みぶ身体障害者福祉会館、南丹市の京都中部総合医療センターで「発声教室」を開催。日本喉摘者団体連合会の認定訓練士の資格を持つ会員が指導員となり、クラス分けし発声練習を続けている。
「教室」は、会員の医療情報の交換や交流、社会復帰へのきっかけの役割も果たしている。手術前の不安から、補装具や発声器具の申請手続き、手術後の生活などに関する相談も受けている。
林田さんは「声を失えばコミュニケーションも難しくなり、外出を避けたり減ったりする。でも、人と集まるのを好まない人でも、実際に集まりに参加すれば、不思議に笑顔になる」という。「声が出ることで性格も変わる。集まれば苦労話も出るけれど、人に話すことでエネルギーになるようにも思う。会に出ることが、生活のはりにもなるようです」とも話す。
林田さん自身、55歳で「声を失い」、会に参加したが、会の活動を続ける理由を「他の人が、声が出た時の喜びを共有できるのがうれしい」という。府北部や滋賀県の会員もいるが、高齢化が進み、運営を続けるためにも地域団体や他の医療関係団体、ボランティア団体との連携が大切と考えており、11月3日に京都産業会館ホール(下京区)で開かれる「みてみて!京都アピアランスケア展」にブースを出し相談コーナーも開く。
京都喉友会
1955年創設。「発声教室」は、「ひと・まち交流館京都」は第1と第2水曜、京都市みぶ身体障害者福祉会館では第3と第4水曜、「京都中部総合医療センター」は毎月第2・第4土曜に開催。Zoomによるオンライン教室も開いている。事務局(林田さん)075(951)5609