2025.10.27
2025.10.27
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
真宗大谷派僧侶 川村 妙慶
親子や夫婦、恋人との口げんかが原因で、思わぬ事件に発展することがあります。愛しているはずの相手なのに、どうして刃物を向けてしまうのでしょうか。
人は、目の前の出来事に心を奪われてしまいます。これは、生存本能としての脳の働きにもあるそうです。思い通りにならないと「危機」と感じ、焦りや怒り、不安が一気に湧き上がってくるのです。かくいう私も、煩悩だらけの人間です。ムッとすることもしばしばあります。そんな時、私はこう考えるのです。「自分の人生を四コマ漫画にしてみよう」と。四コマ漫画は「起・承・転・結」で成り立っています。

起「私はなぜ怒ったのか?」
承「今、相手を責めようとしている。相手だけが悪いのか?私の自我を守ろうとしてはいないか?」
転「来年も3年後も覚えているだろうか?きっとそうでもないな」
結「怒ったところで、身体にも心にも毒ではないか?本当に大事にしたいのは何だろう?」。心の流れを見つめていくと、気持ちが落ち着いていきます。
お釈迦(しゃか)さまは「生・老・病・死」の四つの言葉で人生をお示しくださいました。
「人生は一度きり」と思えば、怒りで一日を終えるのがアホらしくなります。どうしても相手を許せない時、心が爆発しそうな時は、少しだけ俯瞰(ふかん)してみましょう。今の出来事も、長い時間をかけて積み重なってきた結果かもしれません。人は余裕を失うと、嫌な出来事だけを切り取って見てしまうものです。一歩引いて眺めてみると、「これは本当に怒るほどのことだろうか?」「相手の失敗は、命に関わるほど重大だろうか?」。そんな問いを立てるだけで、心に少しゆとりが生まれます。「謝らないこの人を責めても、またどこかで同じことをするのだろうな」
そう思えたら、ふっと心が軽くなりますね。目の前の忙しさや感情から少し距離を置いて、あなたも人生の「四コマ漫画」を描いてみませんか。
かわむら みょうけい氏
アナウンサー。メールで悩み相談受け付け。北九州市出身。