2025.11.11
2025.11.11
あめんど
大津市の住宅地に、子育てや教育の課題に取り組むNPO法人「あめんど」の拠点がある。「親が安心・子も安心」を掲げ、フリースクールや子どもの居場所活動、若者の就労支援などを通して、誰もが自信をもって成長できる場を提供している。
今年20周年を迎えたあめんどの出発は、理事長の恒松睦美さん(57)と夫の恒松(つねまつ)勇さん(58)の子育て中の思いから始まった認可外保育園だ。
「親子が一緒に過ごし、子どもたちが自由に感情を表現してのびのび育つ保育園ができないか」と考え、保育士資格をもつ仲間とともに5人の園児の保育を開始した。
その後、学童期の独自教育プログラムをスタート。きっかけは、北米で娘を学校に通わせた経験だった。「北米では多様な学びがあり、言語や文化の違いがあるはずなのに、娘はいきいきとしていました」と勇さんは振り返る。「ところが帰国後、日本の学校では『ここでは皆と同じでなければいけない』という空気の中で、次第に萎縮していったのです」
当時は、ちょうど発達障害が認知され始めた頃。学校外での教育への必要性も感じて取り組みを始めた。最初は理解が得られなかったが、徐々に学校との連携が進み、今ではニーズのある子を紹介されるようになった。

あめんどの活動は、目の前の個人のニーズを見極めてサービスを創りながら進んできた。「立ち上げた事業の枠組みに人を呼び込むスタイルではない」と勇さん。取り組みを続ける中で、経済的な貧困の家庭への学習支援や子ども食堂、トワイライトステイなどにもニーズが見え、事業の種類が増えていった。
現在力を入れているのは、若者たちのサポートだ。高校を中退したり、社会になじめなかったりする若者が、自分らしく過ごし、自分に合う働き方を見つける機会を提供している。
畑で農作物を作り、乾燥野菜を製品化するほか、3人で1人分の仕事を担う「一人前シェアリング」もスタート。居場所として通う若者たちが掃除や料理を手伝う時に、3人で手分けする様子が楽しそうだったことがきっかけだ。「学校生活を満喫することなく過ごした人たちが、その時間を取り返しているのかな」と感じた睦美さん。1人前の就労が難しい若者たちのために、「3個1就労」の取り組みを編み出した。
掃除や草刈り、ポスティングなどの仕事を受注し、若者がチームで担う。勇さんは、「自分がどれくらいの仕事ならできるのか試せるし、人間関係も含めて失敗が許され、修復や修正ができる挑戦の場になっている」と話す。
あめんどが目指すのは、「能力を高める」ことではなく、「安心や自信、自己効力感を育む」こと。「今の自分を肯定できて、誰かと過ごしてワクワクしたり、うれしいと感じたりできる、そんな豊かな心を育みたい」と睦美さん。今後は、既存の枠組みを超え、多様な子どもや若者が参加できる「体験の機会」を増やしていく予定だ。
(フリーライター・小坂綾子)
NPO法人あめんど
12004年、認可外の「あめんど保育園」設立からスタート。2011年に法人格を取得後、活動拠点を大津市野原郷に移し、特別支援教室やフリースクールなどニーズに合わせた事業を展開しながら活動する。「親が安心・子も安心」を掲げ、親子の学び舎として地域に根差し、家庭の教育力を高める事業や若者支援の事業などに取り組む。大津市野原郷2丁目。連絡先は077(532)3681