ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

障害に応じた作業 やりがい、地域活性化 団体・施設に総額1000万円助成(25/12/08)

2025.12.08

  • 京都新聞福祉活動支援事業
  • ともに生きる

京都新聞福祉活動支援助成

 京都新聞社会福祉事業団は2024年度「福祉活動支援」事業として、地域福祉を担う団体・施設を対象に、運営部門で16件(京都市12、滋賀県4)に合計255万円、設備部門で7件(京都市1、京都府内4、滋賀県2)に計245万円、合わせて500万円を助成した。さらに同事業団の設立60周年記念として、障害のある人の支援団体や当事者団体を対象に特別枠を設け、運営、設備含めて5件に計500万円、総額1000万円の助成を行い、今春から活用されている。

 宇治市の社会福祉法人山城福祉会が運営する「志津川福祉の園」には設備部門で、陶芸用の電気窯購入資金の一部40万円を支援した。同園は主に知的障害のある約40人が利用する生活介護・就労継続支援B型施設で、29年前の開設時から陶芸作業を行っている。ここ数年は納品数が増加して使用頻度も増えた電気窯が、長年の使用で老朽化し、更新を望んでいた。

 作業は陶芸班の10人が支援員(職員)ら5人とともに、粘土の成形から始まり、乾燥や余分な部分を削り取り、みがき、800度程度の素焼き、下絵つけ、釉薬(ゆうやく)かけ、1200度以上の高温で本焼き、上絵つけ、上絵の焼成など多岐にわたる。技法も、ひも状にした粘土を積み上げるひも作り、板状の粘土を型に押し当てるたたら作り、電動機械ろくろ、石こう型を使って成形する型押しなど多様だ。

 障害の程度や特性に応じて、その人それぞれの作業を分担して行い、カラフルに色付けされた干支(えと)の置物、シーサー、湯飲みや小鉢、皿など日常食器の独自製品を生産している。また、同市の観光施設「お茶と宇治のまち交流館(茶づな)」の抹茶作り体験コーナーで使用する茶団子用のお皿にも使われ、平等院や他の観光施設の土産物販売コーナーでもオリジナル製品の「茶団子ストラップ」や箸置きなどが販売されている。

新しい電気窯から焼きあがった干支の置物を取り出す利用者と支援員(11月25日、宇治市)

 最近は製品の幅が広がり、担当の川北優陽さん(35)は「新しい製品を始める時は職員同士で話し、利用者さんの間でも認識が一緒になるようコミュニケーションを大事にしている。障害の特性や個性に応じた作業をやってもらえるように考え、こちらも作業の段取り、調整をしている」と話す。支援員の田中克典さん(60)も「地道な作業に集中している姿にこちらが励まされる。市民に見てもらい、商品として売れることにやりがいを感じているようです」と言う。利用者自身も「自分のものを作るような気持ちで作っている」と楽しげに作業している。

 創作活動にも取り組み、利用者の1人、林晃彦さん(47)らの立体作品が24年の「京都障害者芸術祭」の賞を取るなど高い評価を得て、今年6月から11月まで宇治市役所で展示されていた。抹茶茶碗は宇治市のふるさと納税の返礼品の中にも活用され「利用者さんのやりがいや特徴を生かした作業で製品ができていきます。地域の活性化と魅力発信にも貢献できているのでは」と廣田知子施設長(53)らも喜んでいる。

 運営部門で支援を受けた「全国パーキンソン病友の会京都府支部」は9月に大阪・関西万博へのバスツアー事業を実施した。

 本年度の申請は12月24日まで受け付けている。