2026.01.26
2026.01.26
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
弁護士 尾藤 廣喜
2025年6月27日の「いのちのとりで裁判」(生活保護基準引き下げ処分取消等請求事件)についての歴史的な最高裁勝訴判決を受けて、私たちは、判決当日、厚生労働大臣に、すべての生活保護利用者に対する真摯(しんし)な謝罪、改定前の生活保護基準との差額の全額支給などを求める要望書を提出した。
しかし、総理大臣及び厚生労働大臣からは「反省とお詫び」の意向が示されただけで、「謝罪」はなく、保護費の差額全額支給については、専門家の審議に任せるとの態度をとり続け、専門家の複数の案の併記に基づいて11月21日になってやっと厚生労働省は対応策を公表した。

その内容は、①世帯間の不均衡を是正するとした「ゆがみ調整」を再度実施する。②最高裁判決で違法とされた「デフレ調整」については、2.49%での再度の減額を行う。③ただし、原告については、減額分に見合う「特別給付金」を支給して穴埋めするという内容であった。
これは、①最高裁判決では、「デフレ調整」が違法であるとして全面的に取消されているにも拘わらず、別の理由を持ち出して再度減額するというもので、紛争の1回的解決という要請に背き、司法の判断を全く無視している。②原告と原告以外の生活保護制度利用者で支給額に差をつけることは、本来最低生活の保障は等しくなされなければならないという生活保護法の定めに反するという点に根本的問題がある。
このため、123名もの法学研究者が「引き下げ以前の生活保護費を支給すべき」との緊急声明を出したほか、1月15日には、歴代の元日弁連会長、元事務総長など約1300名の弁護士が「厚生労働省の対応策は、法の支配と三権分立を瓦解(がかい)させることにつながりかねない」との批判の声明を出している。
私たちは司法よりも行政が優越するかのごとき対応策をこのまま放置することはできない。新しい争訟手続きを取ることを意思統一している。
びとう・ひろき氏
1970年京都大法学部卒。70年厚生省(当時)入省。75年京都弁護士会に弁護士登録し、生活保護訴訟をはじめ「貧困」問題について全国的な活動を行っている。