ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

子の視線で「安心」大事に

2026.01.26

  • 若葉

和敬学園/齋藤 裕希(さいよう・ゆうき)さん(25)

 京都市上京区にある児童養護施設「和敬学園」。保護者と暮らせない子どもたちが、大きな家族のように日々を重ねる場だ。性別や年代に分かれて過ごし、子どもたちは宿題をしたり遊んだり、思い思いに過ごす。

 幼児と小学生の女子ホームのリーダーとして子どもの育ちを支えるのが、齋藤裕希さん(25)。入職6年目の職員だ。
 「『大変そう』というイメージをもたれがち。確かにしんどいけれど、そこを乗り越えた先に感動がある仕事。子どもたちの成長を見守れるのが、この職の醍醐味ですね」

 年の離れた弟と育ち、子どもの世話が好きだった。中学生の頃から保育士になりたいと思い、短期大学で学んで卒業後に和敬学園に飛び込んだ。

子どもたちから「さいとうっち」と親しまれる齋藤裕希さん(京都市上京区、和敬学園)

 児童養護施設を選んだのは、長時間一緒にいられることに魅力を感じたからだ。和敬学園を訪れると、職員がみんな気さくだった。「この学園で育った子たちなら、きっと安心感に包まれて成長する。そんな環境で、自分も支援していきたい」。そう考えて決めた。

 生活の場であるため、宿題を見たり、一緒に遊んだり、洗濯や食事の配膳などもするが、「話を聴(き)く」のも大きな役割だ。「みんな、寂しさを抱えながら我慢している。思いを話してくれたら、否定せずいったん受け止めて、『頑張(がんば)ってるなあ』と伝える」
 視線を合わせて聴き、「安心」を大事にする。

 「大人に受け入れられなかった経験をもつ子もいて、親代わりの僕 ぼくたちにも否定されたら、誰にも気持ちを話せなくなってしまう」。言っても無駄だと諦めてほしくない。だから、「話してくれてありがとう」と伝える。「きっと、誰にでも話せるわけではないと思う。ここで、受け入れられる経験を積んでくれれば」と願う。

 印象に残っているのは、入職2年目に担当していた男子小学生が、学校での人間関係の悩みを真剣に打ち明けてくれたことだった。「最後に、『話してよかった』と言ってくれたことが忘れられない。心を許してくれて、必要としてくれて、その思いに自分が応えられたことがうれしかったですね」

 シフト制で7人の子どもを担当する女子ホームの仕事は、「大家族のお父さんのよう」。けれど、どれだけ全力で支えても親にはなれず、「第2の親」のような不思議な感覚だ。「保護者さんと会えたときの子どもたちは最高の笑顔。よかったな、頑張ってきたもんな、という気持ちになります」

 子どもと信頼関係を築ける職員に─というのが目標だ。入職時に憧れていた職員は、怒ると怖いのに、子どもからたくさん相談を受け、信頼され、人気があった。性格も、育った環境も違う子たちが、それぞれ安心できるように寄り添いながら、ほどよい距離で支える。それは簡単なことではない。「挫折しそうで、自分には無理かなと思う時もあった。けれど、その先に進むと、得られるものは大きい。人としても強くなれる仕事だと思っています」

(フリーライター・小坂綾子)

和敬学園

社会福祉法人衆善会が運営する児童養護施設。1924年、少年法による保護施設として認可を受けて設立。家庭的養護を基盤とする。本館のほか、地域小規模児童養護施設や分園型小規模グループケアもある。ショートステイやトワイライトステイも実施している。定員60人。075(241)3320