ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

令和7年度 京都新聞福祉賞・福祉奨励賞  地域で支え合う みんなで輝く(特集)

2026.01.30

  • 京都新聞福祉賞・京都新聞福祉奨励賞

 地域社会の福祉の向上に大きな功績があったとして、京都新聞と京都新聞社会福祉事業団による、令和7(2025)年度京都新聞福祉賞に2団体が、京都新聞福祉奨励賞に2団体が選ばれた。26日に開かれる贈呈式を前に、受賞者と受賞団体の取り組みやその思いを紹介する。

福祉賞 2団体

全国心臓病の子どもを守る会京都支部

交流会を通し つながりを

 心臓病の子どもを持つ親たちが交流したり、悩みを分かち合ったりしている。地域では孤独を抱えがちだが、当事者同士が顔の見える関係を築くことで、共に前を向いて歩んでいる。

 2001年に結成し、京都市内を中心に府内の約60世帯が現在加入する。月1回ハートピア京都(中京区)で会報の発送作業と交流会を開催。ランチ会などのレクリエーションやオンライン茶話会もしている。

 交流サイト(SNS)で簡単につながれる時代だが、石神彩乃支部長(51)は「次元の違う結びつきを得られる」。「保育園の入園準備はどうした?」「中学はどこに進学した?」とより具体的に話ができ、心強い仲間になっている。

 交流会は子どもたちにとっても楽しい場だ。学校では特別な存在でさみしい思いをすることがある。交流会は病気の説明をする必要もなく、すぐに友達になって苦労を分かり合える。

 「無理のない範囲で、ぬくもりを感じられる活動でつながっていきたい」(京都市上京区)

普段運動する機会が少ない子どもたちのために開催したヨガなどの講座=全国心臓病の子どもを守る会京都支部提供

あかりプロジェクト関西

摂食障害 仲間と支え合う

 摂食障害を抱える人の自助グループ。2009年にNPO法人「あかりプロジェクト」(金沢市)から独立し、京都市内で月に一度、語り合いの場「あかりトーク」を開く。

 代表の高橋美香さん(56)は、中学生の頃から摂食障害に苦しんだ。「気持ちを吐き出す場所がほしかった」。出産後、あかりトークにたどり着いた。

 摂食障害は食事を巡る課題が注目されがちだが、それぞれ生きづらさを抱えていることは理解されにくい。同じ境遇の人が触れ合うことで笑顔を取り戻せると信じ、活動している。

 参加者は毎回3~5人。日常の出来事の話題が中心だ。しんどい思いを口にすることもあるが、話したくない人は話さなくてもよい。それでも分かり合えるのが自助グループだ。

 摂食障害への理解は少しずつ広がり、医療につながる人も増えてきたが、一人で苦しんでいる人はまだ多い。「迷わず相談してほしい。声を上げればきっと誰かが助けてくれます」(舞鶴市)

摂食障害当事者の交流の場を営む「あかりプロジェクト関西」代表の高橋さん(舞鶴市)

福祉奨励賞 2団体

こども食堂「からふる」

学生や住民も参加 見守り

 京都市内9カ所で、子ども食堂などの居場所づくりを続けている。京都大の学生らが料理を作り、水遊びにもびしょぬれになって付き合う。子どもの見守りを核として、大学生や住民同士の輪も広げている。

 2016年、左京区の北白川児童館で子ども食堂を始めたのが第一歩。現在も月1回、児童約30人が学生と一緒に勉強や遊びをした後、昼食を囲む。住民から食材を寄付されるなど、地域とつながって運営する。

 誰でも参加できるが、家庭環境や不登校をふと打ち明ける子も。堀江琉花さん(20)は、すぐ解決に導けなくても「ここを居場所にしてほしい」と寄り添う。

 上京区の元西陣小で地元が催す跡地開放にも協力。スライム作りや水遊びが児童に人気だが「学生の方が楽しんでいるくらい」と萩庭佑紀さん(19)。だからこそ、メンバーは100人以上に増えた。野口鎮誇さん(21)も「ボランティアの垣根を下げたい。一度やってみると楽しいかもしれないですよ」と呼びかける。(京都市左京区)

北白川児童館で毎月催す子ども食堂。大学生と一緒に勉強や遊びもする(京都市左京区)=からふる提供

inote+P(あいのてぷらすぴー)

子ども新聞 探究心を育む

 子どももお年寄りも、好奇心でつながる地域の輪を広げたい-。小学生が企業を取材して記事を書く「まちにツッコむ!子ども新聞」を2022年から発行している。これまで計57号を手がけてきた。

 代表の服部加奈子さん(45)は、介護福祉士として高齢者と接する中で「好奇心は人生を充実させる力になる」と実感してきた。子どもたちにも対話力や探究心を育むきっかけにしてもらおうと新聞作りを続けている。

 ワークショップでは、相手の表情を見ながら五感を使って情報を集めるインタビューのこつや、メモの取り方などを伝授する。ネットにあふれた情報とどう向き合うかや、その記事を書いた人の思いを想像することの大切さを伝えている。

 子どもたちそれぞれが書いた記事を編集して新聞に仕上げ、伏見区の小学校や区役所、高齢者宅にも届けている。「誰もがわくわくした気持ちを持ち続けられる社会にしたい」と、ペンを握り、まちを歩いている。(京都市伏見区)

新聞記者として取材のポイントを学ぶ子どもたち(京都市左京区)=inote+P提供

推薦のことば 川村妙慶 選考委員

 

 本年度は「京都新聞福祉賞」「京都新聞福祉奨励賞」あわせて、20団体からご推薦が寄せられました。

 選考委員の皆さまとともに、1団体ずつ、その取り組みをじっくり拝見させていただきましたが、どの活動も地道で、あたたかく、社会に確かな希望を届けておられることを実感いたしました。心より敬意を表します。

 その中で受賞された団体の皆様へ、激励の言葉を添えさせていただきます。

◆京都新聞福祉賞◆

全国心臓病の子どもを守る会京都支部様

 医療や保険制度が十分ではなかった時代に、「わが子の手術ができない」という一人のお母さまの切実な訴えから、この会は生まれました。

 現在では全国に50の支部があり、京都支部は2001年の設立以来、機関紙の発行、講演会や交流会などを通して、心臓病をもつ子どもや大人が、安心して医療を受け、自立した生活を送れるよう支え続けておられます。長年にわたるその歩みが、どれほど多くの方々に希望を届けてこられたことでしょう。深い感謝と敬意を表します。

あかりプロジェクト関西様

 摂食障害で苦しんでおられる方は、今も少なくありません。医師や弁護士、専門家の方々と連携しながら、「同じ思いをもつあなたとつながる」をテーマに、当事者が一人ぼっちにならないための交流とサポートを続けておられます。

 その活動は、まさに団体名のとおり、暗闇の中にいる方の心に、そっと“あかり”をともしてくださる存在です。

◇京都新聞福祉奨励賞◇

こども食堂「からふる」様

 京都大学の学生約100人を中心に始まった活動は、2016年当初は1カ所だった拠点が、現在では9カ所にまで広がっています。

 食事の提供だけでなく、メンバーの皆さまが一緒に食事を作ったり、屋外や室内の各場所に合わせた遊びの企画、運営、学習支援をすることで、安心して過ごせる「居場所」を育んでこられました。

 子どもたちだけでなく、保護者を含めた多くの方にとって、大きな励みとなる取り組みです。

inote+P(あいのてぷらすぴー)様

 「子どもが新聞記者に?」―私の目に留まったのは「子ども新聞」でした。

 子ども目線を大切にし、さまざまな出来事や人物を自ら取材し、記事として発信する取り組みは、対話力や探究心を育み、五感を存分に働かせる貴重な学びの場となっています。

 また、マルシェなどのイベントでのワークショップを通して、多世代が交流する機会を生み出し、将来の地域づくりにもつながっていくことでしょう。

 この2団体は、まさにこれからの福祉を支えていく、大きな可能性を秘めた存在です。

選考委員(敬称略)


川村 妙慶 真宗大谷派僧侶
小山  隆 同志社大教授=委員長
城  貴志 NPO法人滋賀県社会就労事業振興センター理事長
永田  萠 京都市子育て支援総合センターこどもみらい館館長
森田美千代 一般社団法人京都障害者スポーツ振興会副会長