2026.02.10
2026.02.10
NPO法人「宅老所心」
草津市内の田園風景が広がる一角にかやぶき屋根の民家が建つ。2003年のNPO法人「宅老所心」の設立にあわせて築165年の家屋の内部を現代的に改装し、法人本部とした。その建物を同法人が展開する「ランチ」「カフェ」「居酒屋」「子ども食堂」などの会場、楽しい居場所として活用している。すす竹の天井や和紙張りの照明器具、時代を経て黒光りする柱や梁(はり)などの木造平屋は、くつろいでおしゃべりできる落ち着いた雰囲気の空間になっている。
毎週火曜日の「ランチ」には、60代から80代の地域の人たち20人ほどが顔を出す。料金はワンコイン500円だったが、物価高騰で550円に。それでもボリュームたっぷりの手作りハンバーグや茶わん蒸し付きのちらしずし、オムライスなどのメニューが人気だ。調理はスタッフ2人が朝から準備し、お客が訪れれば、全体に目を配る村田美穂子理事長が利用者らの話の輪にも加わる。
月2回は「認知症カフェ」にもなり、介護している家族らが時には当事者も連れて来店する。家族にとっては息抜きの機会でもあり、周囲を気にせずに当事者も同伴できる外食の機会にもなっている。
月1回の金曜日には、食を通して健康へのこだわりを持ってもらおうと発酵食品を中心にした「発酵ランチ」も開いている。夜には月2回、「地域居酒屋」に変身する。十数人から20人ほどの地元の中高年男性らが、自分の好みの酒類を手に集まり、店が有料で用意する煮物やてんぷらなどを肴(さかな)に2時間ほど雑談に花を咲かせる。

たまには地元の医師が訪れて、病気や健康の話もする。「ビールを飲みながら、糖尿病についての話を聞くなんてこともありました」と社会福祉士で運営に携わる中瀬隆康さん(52)。福祉の話題や、困りごと相談の場にもなる。最初は2人程度で始まり、人が集まってくるのに時間がかかったが、だんだんと、姿を見せない人の様子を気にしたり、自治会やボランティアの相談の場になったり、「地域のたまり場」というスタート時点からの思惑にはまってきている。
運営面では、「コロナ禍」で休業し、再開した後、再び地元の人が気軽に立ち寄ってくれる場として定着するのに2、3年かかった。そんな時には、近くの地元公民館で開かれる「いきいき百歳体操」の後に、昼食を食べにくる人もいるのをヒントに、地域の回覧板で情報発信して広報したという。「それ以外、特に困ったようなことはないが、経済的にはやりくりが大変」と中瀬さんは苦笑する。
村田理事長が、きめ細かいケアを目指して宅老所を始めたころに、90歳代の利用者の一人から「気楽に寄れる居場所を作って」と言われたことがきっかけ。なじみの地域でホッとできる場所を提供し、「安心感と生きがいを持って支えあい暮らしていける地域づくり事業に」と考えている。
子ども食堂は、隔週木曜の夕方、小学生20人ほどが、午後4時半ごろから集まり宿題をしたり遊んだりした後、カレーライスやシチューの夕食に舌鼓を打っている。
愛好家らの健康マージャンの会場にもなっているといい、地元に親しまれているあかしだろうか。
NPO法人「宅老所心」
本部は草津市駒井沢町、077(568)3186。「住み慣れた地域でいつまでも元気で暮らしたい」という高齢者のニーズに応じ、必要な時に随時利用できる「通い」「宿泊」「訪問」などのサービスを提供する小規模多機能型居宅介護事業所などを複数カ所で運営している。同事業では居宅の部屋掃除や庭木の枝切り、自動車を使い病院や買い物への付き添いなどが多い。