ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

アートで利用者生き生き

2026.03.02

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NPO法人「京都ひらぎのワークスTAO」事務長 中川 明廣さん

 京都ひらぎのワークスTAОが開設されて、ことしで20年になります。障害のある子どもたちが「学校卒業後も通えて仕事のできる場所を」と、私を含め3家族と支援者のみなさんが京都市北区に、土地、建物を確保してスタートしたのです。

 2010年に就労継続支援B型事業所の認可を受け、4年後には相談支援事業所を併設。現在、知的障害の方を中心に利用者さん21人、職員12人で運営しています。

 取り組む仕事の中心は農作業です。近所の3カ所に畑を持ち、四季を通じナスやハクサイ、玉ネギなど40種を超す野菜を栽培して、車で京都市内へ運び戸別に配達、販売しています。

 「その日収穫した野菜はその日に届ける」をモットーに、1週間のうち月水金は収穫と配達、火木は農作業に充てます。中京区に常設の販売拠点があり、左京、北の両区役所で販売することも。企業発注の製品袋詰めなど室内作業も行いますが、屋外の農作業は利用者さんの健康づくりには最適。お客さんとじかに接する販売は、社会性を養う貴重な機会となっています。

TAO所有の農園で「いずれ直営の野菜販売所を設けたい」と話す中川明廣事務長(京都市北区上賀茂中山町)

 私は若いころから呉服の卸・小売りの仕事に長く携わり、福祉現場には途中から入りました。事務長を引き受けた以上は「何か利用者さんの生きがいにつながる試みを」と思い至ったのが、臨床美術でした。

 アートセラピー(芸術療法)の一種で、参加者が五感を総動員して絵画や造形などに取り組むことで脳の活性化と精神の安定につなげるのです。作品が完成すると全員で鑑賞会を行います。優れた点、努力した点を褒めることで、必ず笑顔が生まれ、認知症や障害のある人にも効果があるといわれます。

 指導者になるにはNPО法人「日本臨床美術協会」が認定する資格取得が必要でした。そこで大学で開かれる講座のほか、広島まで新幹線で半年間通い必要な講座を受講。実習と試験をクリアして、臨床美術士の資格を得ることができました。

 15年前からはTAОと、他の事業所1カ所で月2回、利用者さん対象に主に絵を描く講座を開講。毎回、最後は参加者全員が笑顔になります。発語の困難な人も生き生きした表情に変わって「続けたい」と意欲を示すなど、効果は明らかです。高齢者施設や一般対象の講座も開いたのですが、コロナ禍で中断したままになっているのは残念です。

 福祉事業所はいま、利用者さん、職員ともにその確保が厳しい状況ですが、次代を拓(ひら)いていく取り組みは欠かせません。TAОは直営の野菜販売所を持つのが一つの目標。野菜を加工して6次産品とすることも狙っています。昨年、初めて受注した祇園祭用の粽(ちまき)づくりを「伝福連携」の主力製品に育てていく可能性も探っているところです。

なかがわ・あきひろ

1948年、京都市生まれ。京都市内の呉服問屋に勤務の後、独立。2006年、障害のある子どもを持つ3家族で、北区に通所作業所を開設。08年、NPО法人「京都ひらぎのワークスTAО」へ衣替えして事務長に。尺八演奏家。「臨床美術京の会」代表も務める。京都市左京区在住。