ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

あたたかなこころとの出会い

2026.03.09

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

僧侶・歌手 柱本 めぐみ

 水温(ゆる)む季節。そろそろ春の旅行の計画を立てておられる方も多いと思います。

 旅はそれぞれの楽しみ方があると思いますが、私は時間に追われることのない気楽な旅が好きで、過日友人と出かけた旅でものんびりと町の雰囲気を楽しみながら散策していました。しかしロープウエー乗り場が混んでいて、暫(しば)し待つことになりました。急がない旅ですから少しくらい待つのは構わないのですが、乗り場への誘導がなく、また我(われ)先に行く人もあってちょっと嫌な気分になっていました。しかし下りの係員さんがそれを解消してくれました。登りより混んでいたにもかかわらず、にこやかに「すみませんね。ちょっとお待ちくださいね」と全員に声をかけられ、その上、私が珍しい木の名前を尋ねると丁寧に説明してくださって、待つ時間も楽しいものになったのでした。

 親切にもてなしてくださった宿に泊まった翌日は交通手段がない町なのでタクシーで観光。運転手さんがとても楽しい方で、町のことから自分のことまでいろいろお話してくださいました。「最後に私の好きな場所に行きませんか」と言われて、素晴らしい景色を見ることもできたのでした。

 そして、運転手さんが教えてくださった食堂は観光色ゼロ。昭和風の店内でくつろいで昼食をとりながらふと時計を見ると、電車の出発までまだ1時間ほどありました。周りに喫茶店もコンビニもない様子なので、「電車の時間まで居させてもらってもいいですか」と聞きますと、「はいはい、なんぼでもどうぞ」とおかみさんの明るい返事が返ってきました。そして壁に貼ってある横綱や役者さんの色紙を見ながら、おかみさんだけでなく、常連と思(おぼ)しきお客さまとも話が盛り上がり、旅先での出会いを満喫したのでした。

 観光も食事も満足のいくものでしたが、それよりも、あたたかなこころとの出会いが一番の思い出になる旅となりました。皆さまありがとう。また行きたいと思っています。

はしらもと・めぐみ氏
京都市生まれ。京都市立芸術大卒。歌手名、藤田めぐみ。クラシックからジャズ、シャンソン、ラテンなど、幅広いジャンルでのライブ、ディナーショーなどのコンサートを展開。また、施設などを訪問して唱歌の心を伝える活動も続けている。同時に浄土真宗本願寺派の住職として寺の法務を執り行っている。