2026.05.12
2026.05.12
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
ACT-K主催、精神科医 高木 俊介
毎年この季節に執筆が回ってくると、憲法をとりあげている。今回、憲法記念日には遅れたが、例年以上に黙っておれない。現政権は、今こそ宿願である憲法改正を現実化しようと、腕まくりしている。
背景はいくつもある。まず、コロナ禍で緊急事態宣言が発せられた。多くの国民は外出や日常生活の制限を受け入れ、感染対策のさらなる強化を政府に対して望みすらした。不安な状況に晒(さら)されると、国民は自ら自由を手放すことを権力者が知ったのだ。ならば、次に同様な事態が起きた時、憲法を変えればスムーズに社会を統制することができるだろう。

さらに、現在の不穏な世界情勢だ。ロシアによるウクライナ侵攻は、コロナ禍とダブルパンチで世界を<震撼(しんかん)させた。罰則のない国際法は、力の強い者の勝手な振る舞いを防げない。ならば国家は自衛するだけではなく、場合によってはやられる前にやらねばならない。イスラエルのガザでの虐殺はそれを理由にした。アメリカまで、ロシアと同じようにイランに仕掛けた。もう、なんでもありだ。
今なら、国民も強い国家を望むだろう、憲法の縛りをなくしたい権力者はそう考える。主権在民、平和主義、人権尊重という憲法の三大柱に制限を加えたい。
だが、憲法は国作りの基本理念だ。その憲法によって今の平和で豊かな社会を作ったのは、私たち国民の力だ。無軌道な世界の権力闘争の中で、戦争に巻き込まれずにおれたのは平和憲法のおかげだと、この数年で証明された。経済的達成を基礎にして、本当は十分な防衛力も持っている。
しかし、その憲法の理念・意義を国民に周知する政府の義務は果たされていない。特に、現行憲法の基本的理念に反する変更は「憲法改正限界」と呼ばれ、許されていない。この歯止めが知らされていないのは、権力者の手落ちである。
ましてや、憲法は権力者の行動を制限するものだとわきまえない権力者が憲法を好きにいじくるなど、まったくもって、困る。
たかぎ・しゅんすけ氏
2つの病院で約20年勤務後、2004年、京都市中京区にACT-Kを設立。広島県生まれ。